第1258話:ユアン・ギルシド~統合~

「つまり、人口が少ないから統合したいと」

「そういうことです」

 渡されたデータを見てもなんら不思議な点はない。

 本当に人口が少なくなったから、私の管理しているこの街と統合してしまいたいという申し出のようだ。

 しかし、疑わしい。

 人数が少なくなった街が吸収統合により生活レベルを維持するということはよくある話なのだけど、いささか立地が遠すぎやしないか。

「一つ聞きたいのですが、なぜうちなのですか?」

 本当にこれだけ聞いておかねばならない。

 だって、距離的にも遠いし環境的にも近いわけではない。

「ああ、やはり気になりますか。ただ、順に受け入れを申し入れているのですが今まで一つとして受け入れてくれた街がないだけです」

 まぁ、立地の件を除いても割と疑わしくはあるからな。

 手元の携帯端末デバイスで相手からは見えないように調べる。

 確かに今季の内に彼はいくつかの街に統合の申し出をしている。

 そしてどれも不成立だ、まぁだからこそ今ここに来ているわけなんだけど、どこもそれなりに規模が小さい街を周っている。

 大きい街の方が受け入れてくれる確率は高い、結構余裕があるし。

 そういう意味ではうちには余裕があんまりない。

「残念ながら、あなたの街の規模を受け入れることはうちではできません」

 まぁ、こうなるだろう。

 仕方ない。




 しばらくして、あの街が無くなったという話を聞いた。

 街があった場所には廃墟が残るだけとなり、街の人がどこへ行ったのかと言えば無事別の街に吸収されたということらしい。

 何か裏があるんじゃないかと思っていたがそれは杞憂だったのかもしれないと思ったのもつかの間、受け入れた街が乗っ取られたという話も流れてきた。

 簡単な話、彼らは人口が減ってしまい自分たちの文化を維持できなくなってしまったがために、他のほどほどの人口の街に入り込み、事実上文化侵略をして自分たちの文化を維持したということだ。

 受け入れなくて良かった、という安堵と共になんかそんな生態の虫いたよななんてことを考えた。

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