第1256話:トパリ・コバタ~君のために~

「ピザでも注文するかい」

 狭い部屋、二人きり、緊張した空気を和らげるためにピザを注文する。

 食べたい味とかを確認しようと質問を投げかけてみたが返答はなく、空気は和らぐことはなかった。

 仕方ないと適当に注文する。

「そろそろ話してくれないかな」

 話を聞きたいだけなんだけど、喋ってはくれない。

 というか椅子に座ったまま微動だにしない。

 石像にでもなったのかなというぐらい動かない。

「勘弁してくれよなぁ……っと」

 口から愚痴が出てしまった。

 頭のなかで思うだけならともかく、こういうのを口に出してしまえば余計に彼女は口を閉ざす。

「迷惑でしたか」

 お、意外なことに俺の愚痴を聞いて口を開く。

「ああ、迷惑だね。そう思うならさっさと話してくれ」

 そういう感じならこう言う方が話しそうだ、優しくする必要はないな。

「私は……」

 よし、話し始めそうだ、と思ったその時

 ピンポーンとインターホンが鳴る。

 さっき頼んだピザか……

「ちょっと待ってろ」と言ってピザを受け取り代金を払う。

「食うか?」

 ピザの箱を机の上に開き、一切れ手に取りながら聞く。

「…………」

 優しくしたからかまた石像のように固まってしまった、めんどくせぇなこいつ……

「わかった、俺が全部食べるよ、しかしそれだと太ってしまうな……」

 わざとらしく言うと、ピザに手を伸ばしてきた。

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