第1237話:ユウショ・クリツア~肯定の否定~
「君は本当に素晴らしい人だ」
「よしてくれ、僕は君が思うような人間ではないよ」
そういったやり取りをこれまでに何度行ってきただろうか。
大抵謙遜だとか、そうやって取られるから彼らからの僕への評価を訂正するような機会はそうそうこない。
どうして僕への評価はいつも肯定的なのか、たまには否定的なことも聞きたい。
「やぁ、君はいつものほほんとした顔をしているね」
あ、そういえば一人だけいる。
僕へ投げ掛ける言葉に否定的なニュアンスを含める奴。
表面的な言葉だけなぞれば肯定しているようにも取れるが、僕にだけわかるように否定的なニュアンスを含める。
「君はどうして、僕にそういう物言いをするんだい?」
ちょうど悩んでいたところに現れたこともあり、口をついて出てしまった。
「そういうって、どういう?」
「どういうって、えぇと、君は僕を褒め称えたりしないだろう?」
「なかなか自信に満ちた発言だ、素晴らしいね」
う……
「そうだな、言うなれば君は君が思っているほど完璧ではないし、君は君が思ってるより自分に自信を持っているよ。思ってることを素直に伝えるなら、僕は君のそういうところが気にくわない」
「僕ってそんなに自信満々かい?」
「あぁ、褒められるのが常だからかな。君は自分が否定されるなんて微塵も思っていない、だから私に対してそんなことが聞けるんだ」
「いや、その評価はさすがに言い過ぎじゃないか……?」
こればっかりは本気で謙遜などではない否定をしたい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます