第1237話:ユウショ・クリツア~肯定の否定~

「君は本当に素晴らしい人だ」

「よしてくれ、僕は君が思うような人間ではないよ」

 そういったやり取りをこれまでに何度行ってきただろうか。

 大抵謙遜だとか、そうやって取られるから彼らからの僕への評価を訂正するような機会はそうそうこない。

 どうして僕への評価はいつも肯定的なのか、たまには否定的なことも聞きたい。


「やぁ、君はいつものほほんとした顔をしているね」

 あ、そういえば一人だけいる。

 僕へ投げ掛ける言葉に否定的なニュアンスを含める奴。

 表面的な言葉だけなぞれば肯定しているようにも取れるが、僕にだけわかるように否定的なニュアンスを含める。

「君はどうして、僕にそういう物言いをするんだい?」

 ちょうど悩んでいたところに現れたこともあり、口をついて出てしまった。

「そういうって、どういう?」

「どういうって、えぇと、君は僕を褒め称えたりしないだろう?」

「なかなか自信に満ちた発言だ、素晴らしいね」

 う……

「そうだな、言うなれば君は君が思っているほど完璧ではないし、君は君が思ってるより自分に自信を持っているよ。思ってることを素直に伝えるなら、僕は君のそういうところが気にくわない」

「僕ってそんなに自信満々かい?」

「あぁ、褒められるのが常だからかな。君は自分が否定されるなんて微塵も思っていない、だから私に対してそんなことが聞けるんだ」

「いや、その評価はさすがに言い過ぎじゃないか……?」

 こればっかりは本気で謙遜などではない否定をしたい。

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