第1207話:フェーダ・ソイダ~偽物の街~

「あれ、なんか変な気がする」

 旅行で遠出して住んでいる街に帰って来た時、なんとも言い難い違和感を覚えた。

 何が違うのか、慣れたターミナルの職員が別の人になっていることか、それとも空気の匂いか。

 旅先の雰囲気で感性が上書きされただけだろうか、気にはなるが、帰って身を休めたらこんな違和感もなくなるだろう。

 見慣れた通りを通って自宅へ、その間ずっと違和感はぬぐえずにいたが、自宅は記憶の中にある自宅のままであった。

 それでいて、不思議と無意識下からこれは違うというイメージが湧いてきて、落ち着かない。

 なんでこうも違和感があるのか、思い当ることをいろいろ挙げてみる。

 まず、さっきも思ったが少し長い旅行で感覚が上書きされてしまった。

 ならば少ししたら慣れて違和感もなくなるだろう。

 次に、帰ってくる街を間違えた可能性。

 これはほとんどないだろう、さすがに違うゲートを通って違う街にくることはあってもここまでそっくりで自宅まである街はない。

 ならば、何者かが偽物の街を作って私を何かの罠にかけようとしている。

 これが一番ありそうな気がしてきた。

 旅行で感性が上書きされたと言っても自宅にまで違和感を抱くほど長い期間旅行していたわけではない。

 そして私を罠にかけるためにこういう大掛かりなことをしそうな団体に心当たりがある。


「これはお前らの仕業なんだろ? ドッキリ愛好会」


 あのあたりにカメラがありそうだなとアタリをつけて、声を掛ける。

 私は特に闇の大組織とかと因縁があるわけではない、ただドッキリ映像を撮ることを目的とした大組織に狙われているんだ……

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