第1206話:スデイ・ファンタ~遠い近所~

「やぁ、近所だから遊びに来たよ」

「近所ってお前……」

 ヴェマイ・オルロルト、こいつはこうやって「近所だから」と言って結構遊びに来る。

 確かこいつの家はかなり遠くの街にあったはずなんだが……

「いいじゃないか、細かいことはさ。さぁ、遊びに行こうぜ」

「お、おい、遊びに行くのはいいけどちょっと待てって」


「もう夜だぞ、今日は泊っていくかい?」

「いや、帰るさ。近所だからな」

「おまえ近所って言うけど、三つ四つは向こうの街じゃないか。もしかしてこの街に引っ越してきていたのか?」

「いいや、以前と変わらない場所に住んでるぜ。ただ、この街は近いところにあるだけさ」

「全然言っている意味が分からないのだが」

 普段からこういう煙に巻くような言い回しが多くて困る。

「まぁ、そんなに気にすることじゃないってことさ。じゃあ、また来るぜ」

 そう言って、彼は去っていった。

「そうは言ってもなぁ」

 ゲートで直接つながっているわけでもないし、そんなに簡単に行き来できるような場所でもないんだが……。


「やぁ、近所だから遊びに来たよ」

 本当にまた来た。

「昨日は本当に帰ったのか?」

「ああ帰ったさ、当たり前だろ? 自宅で飯食って風呂に入って健康的さ」

 本当かよ……とも思うが、彼が家にいるのをビデオ通話で確認した夜の翌の朝に遊びに来たこともあるからな……

 多分本当なんだろうけど、謎が多い。

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