第1167話:ブアーダ・フバニア~大砲~

「大口径砲……? それどうかしたんだ?」

「なに、ちょっと数日ばかり預かることになってな」

「大口径砲を……?」

「ああ、ちょっとな。ままよくあることだろ」

「ままよくあること……?」


 同居人……!!! 怪しい、怪しいぞ!

 普通シェアハウスしてるのに大口径砲を持って帰ってきたりはしないだろう、せめて何かを疑われることを想定して持って帰ってきてほしい。

 とりあえず混乱させられて承認を無理やり取り付けられたようなものだが、思い返してみたら承認はしていない。

「同居人! っとぉわぁ!!?!?」

「どうした、こんな夜中に騒々しい」

「いやいやいや、なぜその大砲をこちらに向けて置いているんだい!? 危ない!」

 ちゃんと事情を聞こうと同居人の部屋のドアを開けたら大きな砲身がこちらを向いていた。

「いやなに、こいつは見た目通り重くてなぁ……、こう、後ろ向きに引っ張るしかないんだよ。とりあえず部屋の中に入れたところで妥協したという次第だ」

「なるほど、事情は分かった、いや、何一つわかっていない! 部屋に入ったら砲身が向いていた以上のことは何もわからないぞ! そもそもどこから預かってきたんだい? こんなものをさ」

「友人さ」

「友人? 君に友人なんて」

「いるよ、君の知らない交友関係があるのさ」

「普段家から出ないくせに?」

「出なくても友人はできる、君が粗食でも太るようにね」

「なっ!」

「夜中に隠れて間食を取っていることを私が知らないとでも? 同じように君が見てないところで私も交友ぐらい作っているということさ、というわけでもう寝るのだ、台所には寄らずにな」

「ぐぬぬ……」

 こんな調子で言いくるめられ、枕を絞りながら寝た。



 翌朝、ドゴォンという爆音で目が覚めた。

 なんだなんだと同居人の部屋に飛び込む。

「お、おお、起こしてしまったか」

「まさか今の爆音はその大砲を……」

「いや誤解だ、よく見てみろ、壁が壊れたり焦げたり、そう言った形跡はないだろう」

 確かに、砲身が向いていたはずの扉もその向こうの壁も無傷だ。

「所謂ジョークグッズの類らしい。対象の家にこれを預け、あらかじめセットされていた時間に爆発音、大砲が爆発したかと思って慌てたところに「ドッキリ大成功」の看板を持って飛び込んでくる、そういう筋書きだったみたいだよ?」

 促されるままに扉の外を見ると、タイミングを逃したという顔をした男が一人。

「君がすごい勢いで先に飛び込んで来たからタイミングを逃したんだろう、かわいそうに」

「早朝にいきなり爆音で起こされた私の方がかわいそうだ、君たちにはきちんと償ってもらおう」

「たちとは、私もかい?」

「あんたの友人なんだろう?」

「しかたない、甘んじで受け入れよう」

 なんという迷惑な話ではあるが、多少この同居人も動揺しているような様子を見せていたし、多少は加減してやることにしよう。

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