第1164話:フェア・スピーリ~餅生物~

「ファクタ先生! 待ってくださいよー」

 僕はこれから沢山の新種生物を発見することを夢に定め、ファクタ先生に弟子入りをした。

「うるせぇ、俺は弟子なんか取らないって言ってるだろ、ていうかなんで俺なんだ」

「僕が新種の発見を生業にしたいと思った理由がファクタ先生だからです」

「あの店で少し話しただけだろうが、そもそも俺としては新種探してる奴が増えると困るの、飯のタネだからな」

「僕は普段から食べるのに困ってないので、発見した全ての新種をファクタ先生に譲ってもいいですよ」

 僕としては新種の発見ができればいいし、弟子として付き従わせてもらえるならその程度のことは問題無い。

「それはダメだ、万が一にもないが俺がお前を弟子にしたとする、その場合お前が手柄を立てたとしてもそれはお前の手柄、共同で発見した場合は二人の手柄だ。別に俺だって食うに困ってはねぇ」

「弟子入りを認めてくれるんですね!」

「そうは言ってない。俺だって素人の指導をするほど暇じゃないんだ、弟子入りにしても手伝いにしても有用であることを示してくれよ」

「入門試験と言う奴ですね!」

「あー、もうそれでいい」

「よーし、頑張るぞ。こう見えてもですね、僕は前の世界では生物学を専攻していたので、結構詳しいんですよ」

「ほーそれは楽しみだな」


「これは」「既存のヴェルコニウサギだ」「これは」「それも既存、グレアニアソだ」「既存」「既存」「既存」


「まぁどれも珍しい種なのは確かだが、新種かどうかの判定用のアプリがあるから携帯端末デバイスに入れておけ……、そうだな。こいつとかは新種だな」

「え、何ですかそれ」

「新種だから名前は無いんだが……、そうだな、暫定的にモチ石ウチャロアニスとでも呼んでおくか、命名権は売りに出すから違う名になると思うが……」

「え、これ生物なんですか……? 柔らかい石では?」

「これは生物だよ、まぁこの世界での生物とは何ぞやという定義もあやふやなんだが……、わかりやすいのがこの世界に来るときに卵から出てくるってことか、このおそらく自力移動が出来なさそうなモチ石の周りに卵の殻が散らばっているだろ、この質の殻はケビネアグデア由来に多くて、あそこは知的生命体がいない。そうなると殆どの生物がアーカイブ化できてない新種ということになる云々」

 弟子入りは拒むくせに結局実地になるといろいろ教えてくれる……

 やはりファクタ先生はいい先生だ!


 それは別として生物の定義が異常すぎて理解の外なので新種を探すのは諦めることにした。

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