第1163話:コエタ・フーガ~リーダーからの相談~

「君ではこの先の戦いについてこれないかもしれない」

「え?」

 クエストの帰り、一人リーダーに呼び出されて何かと思ったら酒場のカウンター席でそういう話が始まった。

「いやぁ、君も最近は伸び悩んでると言っていただろう? しかし、我々はそうではない。実はね、もう少し上を目指したいと他の者から相談を受けるんだよ、私もリーダーとして仲間を危険に晒すわけにはいかないからね、全体の力量を見て可能かどうか判断して、クエストを受注するわけだ」

「はぁ」

 まぁ、それがリーダーの役割ですし、そうするのが当たり前と言ってはなんだけど、当たり前だ。

 この人は、なんでわざわざ呼び出してそんな当たり前のことを僕に話すんだろう、やけにハキハキと普段に比べたらとても聞き取りやすい言い方で。

「だからね、我々がより上を目指そうと思ったら……どうすればいいと思う?」

 笑顔でこちらに話を振ってきた、そんな当たり前のこと、

「え、そりゃあ、もっと強くなるしかないんじゃないですか」

 そう答えるしかない。

「そうなんだよねぇ……」

 リーダーは今までの勢いはどうしたのかというほど静かにそう答えて今まで置いていたカップに口をつけた。

「それでさぁ。話を戻すんだけど……、君は今伸び悩んでるって言ってたよね?」

「そうなんですよ、いろいろ特訓法とかも試してみてはいるんですけど、どうにもしっくりこなくて……」

「だよねぇ……、うーん、そう、だよねぇ……」

 普段はここまで聞き取り辛くないというぐらいにもにゃもにゃ言う。

「大丈夫ですって、僕らはもっと強くなれます!」

 何か強くなれるかどうかに不安でもあるのかな。絶対に強くなれると思うんだけどな。

「そうなんだよねぇ、我々はもっと強くなれるはずなんだけどねぇ……。うんやっぱりそうだよね、強くなるには、僕がもっとしっかりしないとね」

 はげましが効いたのか、何かを決意できたようだ。

「リーダーは十分しっかりしてますよ!」

 上手く相談に乗れたようで良かった。

「こういうことはあまりはっきりと言いたくはなかったのだけど……」

 わざわざ、椅子から立ってこちらへ向いてリーダーはそう切り出した。

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