第1158話:ナカネ・イトキチ~価値の循環~
「そういえば、うちのお店全然お客さん来ないのに、どうやって利益をあげてるんですか?」
バイトをしているお店、とりあえずカウンターに座ってお客さんが来たら対応するだけでいいと聞いて始めたのだけど、本当にお客さんが来ない。
「まぁ、食用にも観賞用にも向かない石屋だからな。99%趣味でやってるし、利益なんてゼロだよ」
「ゼロって、え、じゃあお給料はどこから出てるんです? 店長のポケットマネーですか?」
「いやいや、もしかしてあまりこの世界の経済システムについては詳しくないか」
「えぇ、まぁ。でも、買い物にはパソが必要だし、どこらかしらで発生していた売り上げの一部が僕のお給料になっていたのでは?」
「まったく売れてないよ、裏で発生してる利益もゼロ。だけど給料は払える」
「うーん、どうにも理屈がわかりません。無からお金が湧いてるとかでないと」
「そうだね、無からお金が湧いてる」
「!?」
「あはは、正確には店をやってるだけで生活に困らないだけの補助金が出る。人を雇えばさらに追加でね」
「えぇ、でもそれじゃあそのお金はどこから調達されてるんですか」
さすがに国からと言ってもどこからかは吸い上げられているはず、お金は循環するものだし。
「まぁ、難しい話なんだけど、この世界では食料や土地といった生きるのに必須の価値は飽和してるんだ。特に努力をしなくても行き渡らせられるだけの量が常にね」
「それは知ってます」
「それによって最低限は常に保証できるんだ、その分がこうやって店を構えるだけで貰える補助金ってわけ、まぁ無くても最低限は貰えるんだけどね」
「えぇ……そんなのいつか無くなっちゃったりするんじゃ……」
「いいんだよ、価値の交換は新たな価値を産み続ける。無限に供給されるお金はそれを加速させる。それができるだけのリソースがあるんだ、多少の堕落者はしかたないよ。君も僕ね」
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