第1129話:ウチガ・ビヨンド~包装実験~

「よく来てくれたね」

「急に助けてほしいなんて言ってきたから来たんだ、何があった?」

「いや梱包を手伝ってほしいだけだよ」

「悪いが帰らせてもらう、これ以降お前のヘルプ要請には一切応えないからな」

「待って、君にも利がある話だよ、というか私が君に助けを求める必要がある自体なのは間違いない」

「もし下らない話だったら話を聞いてあげた料を請求させてもらうぞ」

「…………」

「そこで黙るな、帰る」

「待ってって、君をどう納得させようかと思案したんだ。とりあえず現場を見てもらった方が早いか」

「見て納得いかなかったら帰るからな」

「これだよ、物量が多いとかなら一人で黙々とやるんだけどね、どうにも知恵を絞らなくてはいけないようだから」

「これをこの箱に入れるのか……?」

「そうそう」

「この、どう考えても小さすぎる箱に……この、うっかり衝撃を加えたら折れそうなパーツがたくさんあるフィギアを……?」

「そうそう、君はいろいろ知っているだろう? いい方法はないだろうか、もちろん謝礼は払う」

「一回り大きい箱を用意しろ、それが一番簡単だ」

「それはできないんだよ、納品先のトランスポーターがこの大きさまでしか対応してないらしくてね、どうにかしてこれをこれに入れたいんだ。ほら、前に物がたくさん入る箱とかの話をしてくれただろう? ああいうのあるんじゃないかい」

「空間圧縮したものはトランスポーターでは送ることはできない」

「本当に?」

「ああ、空間の圧縮術式をトランスポーターの送り先で再構築する際に空間が壊れる、送るなら特殊配達を利用するのが確実だな……」

「特殊配送?」

「簡単に言えば配達員が直接持って配達するやり方だ、まぁ欠点としては時間がかかるのと、少し値段が高いぐらいか……」

「じゃあ空間圧縮した箱を用意するか」

「いや、特殊配送を利用するならトランスポーターの規格を気にしなくていいだろう。普通に大きな箱に干渉材を詰めろ」

「そえなら特殊配送を利用しなくてもいいんじゃないか?」

「その大きさだとトランスポーターが使えないんだろうが」

「あれ?」

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