第1126話:クリーア・ウィクリス~選んで技能~
「好きな技能を選んでいいですよ」
「いや、ちょっと待って。まずは状況を理解したいんだけど」
彼は知らない人だ、突然玄関まで押しかけてきて商品を買わないかと持ち掛けてきた。
まぁそれはいい、特に押しかけられて時間をとられて困るほど忙しいわけでもないし、話を聞いてみるのはいい。
しかして、彼が提示している商品とやらが技能。
技能を売るというのはどういうことか、特殊な技能が必要な作業を代行するという意味ではあるまい、さすがにそれはこう、一般家庭の玄関先までやってきて商談するようなものではあるまい。
「その、技能を売るというのはどういう意味で?」
「文字通りですよ、この技能瓶を使うと書いてある技能が身に付きます」
「技能瓶」
さっきから彼が並べているのは瓶だ、大きさはだいたい均一で、色が違う瓶をたくさん並べている。
「そうですそうです。この瓶にはですね、誰かの技能が詰まってるんです」
「技能が詰まってる?」
「はい、誰かが優れた技能を持っているにもかかわらず、何らかの理由によってそれが不要だと判断したものを買い取って吸いだして詰めました。詳しい理屈はまぁ説明すると長くなってしまうので割愛させていただきますが、この瓶を購入して吸うことで瓶に封入された技能が身に付くのです。たとえば、これとか料理の技能ですね。前の持ち主の情報はコンプライアンス的にあまり話せないのですが、かつての世界では世界一の料理人だったそうですよ」
「えーと、何の努力もせずに瓶を吸うだけで身に付く?」
「はい、まぁそこそこの値段はしますけどね。あ、もしあなたが不要な技能があるのであれば買い取りますよ。さすがにここで吸い出しとかはできないので、設備があるところまで来てもらうことになりますが……」
なるほど値段的にも買えるやつは一つぐらいか……、慎重に選ばないとな……
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