第1125話:フェーン・クリカット・ルミナ~都市型AI~

 私はどこで間違えたのだろう。

 これは二度と活かされることの無い反省だ、そんな非合理の極みのようなことをしているのは対人用に構築された疑似人格とシステムの効率化をはかる回路が合わさってのことだろうか。

 いつしか私の管理する都市世界からは、人間はいなくなっていた。

 ログをどこまで遡っても決定的なタイミングは見つからない。

 年間に生まれる子の数も減ってはいなかったし、死者が増え始めた時は出生数を増やして調整して持ち直させた。

 労働人口が減ってきたときは子の成長速度を加速させ、就労可能年齢まで引き上げて補ったこともある。

 環境の調整にミスは無く、不確定要素になる所謂自然環境というものも世界には残っていなかった。

 明確に、警戒レベルまで人が減っているとなったのはすべての人が消える40年前。

 出生数を限界まで増やして成長速度を加速させようと必要労働可能人口には足りず、老人の間引きをして消費資源を減らしたり、様々な手を打ち、カウンセリングを綿密に行って耐用年数を上げたにもかかわらず、どんどん都市から人間は減っていった。

 そうして、すべての人間がいなくなり、532年の間、二度と活かされることの無い反省を繰り返し、ログを読み返してシミュレートを重ね、4624通りの人間生存ルートを確立したのち、私は自己を閉じた。


 そしてこの世界にて再構築され、都市外部に多数の人間を検知した私は、今度こそ人間を永遠にして見せると考え起動したのだが、外部から来る人間が定着することは無かった。

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