第1119話:ヒチ・サイガネ~個人所有の飛空艇~
「……腹が減ったな」
空になって久しい食糧庫を覗き込み、ため息を吐く。
最後に地上に降りたのはいつだっただろうか、飛空艇を買って飛ばしてたら制御不能になってしまって降りられなくなってしまった。
最初の数日は食糧庫に用意していた豊富な非常食で何とかなっていたし、何とかなるだろうと楽観していたが、気付けば空になっていて、空腹でデッキに転がるぐらいしかできることがなくなっていた。
仕組みにも詳しくないから、直そうにもどこを開けば弄れるのかすらわからん。
このまま干からびて死ぬしかないか、昔から夢だった飛空艇を手に入れて死ぬならそれも悪くはない……
いや、悪い、十二分に悪い。
腹が減って弱気になっていた気がする、腹は減ったままだけど日光を浴びてたら少し元気になった。
とりあえず何とかして降りなければならない、空腹は限界だし、本当に動けなくなるのも時間の問題だ。
この船は空を行く船だ、周りが海なら泳いで脱出する必要があるが、空から降りるだけなら落下して死ななければいい。
パラシュート、そうだパラシュートとかあれば安全に降りられる。
どうして思い至らなかったんだろう、パラシュートぐらい標準で装備されてるだろ、飛空艇なんだから。
無い。
無いわ、びっくりした、隅から隅までひっくり返してパラシュートの類出てこなかった。
でも保存食のパックは出てきた、これでまだ数日はなんとかなりそうだな。
しばらく頭悩まして脱出方法を考えることにしよう。
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