第1120話:トアナ・ゴンド~空に浮かぶ~
「あれは……珍しい。空飛ぶ船か。それにしても小ぶりな」
空を流れる雲を眺めていると一つ、船が流れてくるのが見えた。
長距離を移動するだけなら門でもなんでもあるこの時世にわざわざ個人艇でこんなところまでくる者に興味を持った。
ちょっと顔でも見に行ってみるかとすいと羽ばたき、船の高さまで飛びあがる。
「おや、もしかして漂流中かの?」
船の中を覗き込んでみるとやたらと荒れていて、一人船の主と思われる者が倒れていた。
「おーい、生きとるか~?」
中に入って直接声をかけると何とか返事を返して来た。
「うーん、なんとか……」
「うむうむ、助けが必要かの?」
「食料を恵んでくれると、助かります……」
どうやら腹が減っているらしい。
一度降りて食べれるものを持って戻ってくる。
「いやぁ、助かりましたよ。あ、いや一時的にですけどね? まだ状況は保留されただけで解決したわけじゃないですからね」
食べたら元気になって、よくしゃべるようになった。
なんでも、船が制御不能になってここしばらくずっと空をさまよっていたらしい。
「しかしこんな空の上で人に会えるとは僥倖、相談に乗ってくれませんか」
「うーむ、別に相談に乗るのは良いが……、わしが抱えて降りれば良いのではないか? おぬし一人ぐらいならかるいものだが」
「それも考えたんですけどねぇ、とりあえずライフラインは確保できたと考えるとですね、この船を空に放棄するというのももったいな、いや、危ないでしょう? 空を行く他の人や生物に危害を与えてしまうかもしれない」
「ふむ、確かに……。っと、待て、らいふらいんの確保とやら、もしかしてわしにこれからも食料を運んでもらおうなどと目論んでいるのではなかろうな? さすがにそれは御免こうむる。ロープでもなんでも持ってくるから係留してさっさと船を降りるが良い」
「いやぁ、ロープ持って来てくれるんですか? その発想は無かったなぁ。できれば係留に適した高い木とか塔とかに心当たりがあれば教えてもらいたいんですけど……」
「む……」
確かにこの辺りの森には塔も巨木も、この船を係留しておける場所はない。
「うーむ、仕方ない。係留する場所が見つかるまで、高い塔か木が見つかるまで食料を運んでやろう。見つかるまでだぞ!」
「いやぁ、それはありがたい。船の気分次第ではありますが、よろしくお願いします」
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