第1102話:チケーチャ・カチオン~光を操る~

「ここの壁に光を焼きつけたい」

「光を焼き付けるとは……?」

 クライアントからちょっとよくわからない依頼を受けた。

「ここは光を苦手とする人も訪れる予定だから、光源を置くことなく光が当たってるように見えるようにしたいってことなんだけど、可能かな」

「光源は置かない、壁が光源になるとかそういう感じでもなくですよね」

 なんという無茶な依頼だ。

「ああ、ゼロでなくてもいいけどできるだけ発光体は減らして、光に弱い人が苦労しないようにした上で、普通の人たちは普通に見えるようにしてほしい」

「難しいこと言いますね、物が見えるってのは光が反射してるか発光してるかのどっちかですよ」

「だからあんたに何とかしてほしいって話を持ち掛けているんだよ、光の魔術師の異名を持つあんたにさ」

「そりゃあ意味が少し違うんじゃあねぇかな、俺は光源とかのバランスが少し上手いってだけでない光源で光が当たっているように見せかけるなんてことは……できないこともないのか……?」

「お、さすが!」

「少しだけなら光源を置いてもいいんですよね? うまいことバランスを調整してやれば光が当たってないのにあたっているように見えるようにできるはず……」



「どうです、これ光源殆ど無くて光の反射とかをうまいことやってるんです」

 何とか計算して指定された要件を満たした空間を作り上げてお披露目の日を迎えた。

「おぉ……素晴らしい、と非常に申し上げにくいのですが、今から少し修正をお願いしてもいいでしょうか、当然報酬は追加で用意させてもらいます」

「なんです?」

 これ結構綿密な計算の上で成り立ってる空間だから修正も結構大変なんだけど。

「光が当たっていないとダメな人にも使ってもらいたいんですよ」

「これからそれは無理、各自懐中電灯でも持たせてマントの下で自分に当てるとかしてもらってください」

 光を減らすのと光を増やすのの両立はさすがに不可能だ。

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