第1101話:デリィタ~人工的に作られた命~
「へぇ! じゃあ君も作られた命なんだ」
偶然相席になった相手も人工生命体だった、なかなかない偶然だと思う。
彼は少し興奮気味に反応してしまった僕とは対照的に、控えめにこくりとうなずいた。
「てことはさ、君も生まれた意味とかに悩んだりした?」
「あ、いえ僕は培養兵士の一人だったので、作られた意味も死に方も定められてましたから」
「ああ、そういうタイプの人工生命体かぁ、僕は実験の成功例としての人工生命体だったからさ、人工生命体を生み出すって目的で作られちゃったのよ。生まれた瞬間目的達成じゃん? あとは性能テスト性能テストでいろいろ計測されてさぁ、なんか俺にはよくわからん理由で研究停止、俺は処分されてしまいましたと、そういう一生だったのよ、自分が何者なのかとかそういうこと考える暇もなくね」
「ひどい話です……ね?」
僕から見れば君の境遇もなかなかひどいよって思ったけど言わないでいいかな。
彼は納得しているようだし、余計なことを言って混乱させるのもかわいそうだ。
「いやぁ、それで死んでからいろいろ考えてるわけなんだけど、やっぱり生まれた意味ってのは生きてるうちに見出さないと意味ないものなのかなぁって最近思い始めたんだよね」
「それは、どうして?」
「この世界では目的目標を環境から得ることが無いから、常識は前の世界から持ち越しだけど、この世界での人生はどこへ運べばいいのかなんて指標は与えられないだろう? 君の生前みたいにさ」
「確かに……」
「前の世界で生まれた意味を考えるよりさ、この世界でどう生きようかを考えるのが大変でね、君もそう思うだろ?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます