第1099話:タクチテ・キーズ~どっちが本物?~

「助けてキーズ!」

「あら、久しぶり。あなたも死んだのね」

 昼のまどろみの最中、生前の旧友イチアキ・ハンノが飛び込んできた。

 この感じも懐かしい、よく彼女は問題ごとを抱えて飛び込んできていたものだ。

「そうなんだよ! それは置いておいて、この世界に来た時にどういうわけか」

「増えちゃったんだ!」

 後ろからもう一人出てきた。


「経緯を説明してもらえる?」

「普通に病気で死んだんだけど」「病名なんだっけ?」「わかんない、私聞いてなかったもん」「私も聞いてなかった」

「病気は何でもいいわ」

「じゃあ風邪で死んだってことで」「風邪で死んだってのはダサくない?」「かっこいい病気って何よ」「癌?」「癌ではなかったと思うけど」

「どうでもいいわ」

 相変わらず話が進まない、一人で話してる時もそうなのにそんなハンノが二人もいる。

 話が進むわけがない。

「別に死んだ経緯とかはどうでもいいから、いつ増えたのかと、どうしたいかの話をして」

「どっちが本物かをはっきりさせたい」「そう、私が本物だって証明して!」「あ、私が本物だよ!」「私の方だって!」

 一つやり取りする間に喧嘩が始まるな……、よく私のところまで何事もなく来たものだ。

「残念だけどどっちが本物かなんてことは私にはわからないよ、私から見たらどっちも知っているハンノそのままだし」

「えー、キーズならわかると思ってきたのに!」「そーだよ!がっかりだよ!」「いっつも助けてくれたのにね」「ねー!」

 仲がいいのか悪いのかはっきりしてほしいな……

「別にはっきりさせる必要はないんじゃないかな、普通にこの世界には結構同じ人がいることもあるし。そうだ、確か多重人格な人は人格ごとに分かれちゃうって聞いたことあるけど、ハンノもなんじゃない?」

「多重人格って?」

「一つの体に二つ心があったりすること、あなたたちはそっくりだけどちょっと違うみたいだし、そういう多重人格で元から二人だったってことじゃない?」

「へー私達元から二人だったんだって」「そうだったのか」「じゃあどっちが本物なの?」「私だと思う」「私だよ!」

「どっちも本物のハンノよ、仲良くしなさい」

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