第1086話:クラツキ=ハクロウ~一代変異~

「一代変異?」

 友人宅で珍生物図鑑を見ていた

 ら、明らかに全く違う見た目を持った生物が同種として描かれていた。

「そう、環境に合わせた形質を子に発現させて繁栄しようとする生物っていうのは結構いるんだけどこの生物は生まれてから死ぬまでの間に環境に適応した形質を獲得する、珍しい生物でね」

「それってつまり、高温下で暮らせば熱に耐性を持って、水中で暮らせば水中で呼吸ができるようになったりってこと?」

 とんでもない生態の生物だ。

「そういうこと、でもどんな環境に適応して姿が変わっても同種同士では子を残せるというのだから驚きだよね」

「はぁー、同種って判断するのも難しそうだけどなぁ」

 図鑑の絵柄には大柄だったり手足の形が違ったりそもそもなかったり、角の形が多少似ているか……?という感じ。

 でも似たような角の生物は他にもいっぱいいるしな。目の前の友人にもある。

「その辺は彼らにしかわからない特徴があるんだろう。言葉だったり、そういうの」

「なるほどなぁ、ところでこれって、この世界だとどうなるんだ? 面白い環境がめっちゃあるから、面白い姿になってると思うんだけど」

「人間に紛れて暮らしてるよ、この世界では人間の形質を獲得するのが環境に適応してるってことだったんだと」

「え、」

「冗談だよ」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る