第1054話:アイホリ・イゾノ~地底エレベーター~
「そういえばさ、いつでも快適な気温なんだよな?」
地底の都市に向かうエレベーターの中、暇なので詳しそうなミョウジンに質問する。
「そうだよ。夏季も冬季も、太陽の位置に一切の影響を受けないから安定した気候が実現しているらしい」
「じゃあさ、普段からそこに住むのはダメなのか?」
「うーん、どうなんだろうね。僕も行くのは初めてだからなぁ、何か住むには不都合があるのかもしれない」
「そもそも、そんなとこのことどこで知ったんだよ」
「広告を見たのさ「避暑なら地底都市ウロアツナで決まり!」っていうね。見た瞬間これだ!って思って調べて用意して君を誘ったってわけ」
「へぇ、でも上は地獄みたいな暑さの割にこのエレベーター、俺たち以外誰も乗ってないのな」
「……たぶん、あんまり知られていないだけだと思うよ」
「そこは何か肯定的なことを言いきってくれよ、不安になるじゃねぇか」
「まぁ、行ってみれば全部わかるよ。望んだ環境じゃなかったら帰ればいいし」
「この2時間のエレベーターに乗ってかぁ、できれば快適な避暑地だといいなぁ」
「確かに往復4時間この何にもない部屋で待つのは嫌だよね。帰りは名残惜しみながら感想を語り合って暇することなく地上へ戻れると最高だね」
「そうなるといいけどなぁ」
退屈な2時間が過ぎ、エレベーターは地底都市に到着した。
上を見上げればとても高いところに天井があり、その天井を支える柱のように多数のビルが建ち並ぶ。
太陽の光とはまた違う冷えた光ですべてが照らされていて、端的に言えば
「涼しい」
「肌寒いわけでもないし、聞いていた通り快適だね。さっきの不安は杞憂だったみたいだ」
「んー、でもなんか、全体的に大きいような気がする」
「確かに……」
扉は普段見かけるものの3倍近い高さがあるし、停めてある車も誰が乗るんだってぐらいでかい。
「これは……、物のスケールが全部巨人のスケールで作られている……?」
「小人になったみたいだな」
「なるほど……、そういうことか。巨人基準の都市なんだここは」
「どうりで全部でかいわけだ、どうする? 帰るか?」
「いや、観光は僕ら向けの物もあるみたいだ。住むのは無理だけど、夏季の間ぐらいはここに滞在するのもいいと思うよ」
小人向け料理店に入ってみたものの、料理がどれもでかすぎて、食べきれないとか、ベッドが広すぎて一部屋じゃねーの?みたいな体験を2週間ぐらいしたから、帰りのエレベーターでの話題には困らなかった。
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