第1050話:フラタ・フォニオ~夏の空の話~

「夏だな」

 空を見て呟く。

「空を見るまでもなく夏だよ」

 この気温ではそう言われてしまうのも仕方ないであろうと思う、

「そうだけど、やっぱり夏は空だろうよ」

「うーん、俺にはよくわからんが、こういうのが夏の空なのか」

「そうだよ、地方によって結構変わると思うけど、この辺の夏はだいたい毎年こんな感じ」

 あんまり他のところには詳しくないけど、この辺の空のことならいつも見上げ続けているからよく知っている。

「例えば、空の青が少し深くなるだろう? 他の時期はもう少し薄い色をしているんだ、わかるだろう?」

「わからん、空の色なんて覚えちゃいないよ」

「えー、空の色は日々変わって面白いのに、飽きない趣味だと思うよ」

「すぐに飽きそうだ」

 そんなこと言わないでくれよ、僕はそれをかれこれ10年はやっているんだから。

「あと、空で分かりやすいのは雲の動きとか、この時期の雲はさ」

「いや、長くなりそうだからいい」

「えー、聞いてくれよ。空の上にはこんな気温なのに氷がめっちゃ浮くとか、そういう面白めな話がいっぱいあるからさぁ」

「もっと完結に、わかりやすいのはなんだ?」

「うーん、そうだなぁ……簡潔に分かりやすいのかぁ、あ、太陽がめっちゃでかくなるよ」

「ああ、なんとなくそれはわかる」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る