第1040話:タレトア・ラリート~脱法摘発~

「全員手を上げろ! 全部だ、おとなしくしろよ」

 機動隊が突入してきた、バレたか。

 違法ではないから積極的に摘発はしないと思っていたのだが、判定が変わって摘発対象になったのかもしれない。

「お前、それを見せろ」

 マジか、運が無いぜ。

 俺に来るとは。

「どうぞ」

 大丈夫だ、今朝確認した基準では俺のもっているこれは摘発対象にはならないはず……

「……よし」

 一通り確認された後に返された。

 どうやら今のところはセーフという判定のようだ。

「次、お前だ。見せろ」

 緊迫した空気の中、次の奴もセーフ、その次も、その次もセーフ。

 だんだんと、全員セーフで見逃されるんじゃないか?とそんな雰囲気になった中。

「これ、回せ」

 一人が引っかかった。

「待ってくれ! それは前の基準だったらセーフだっただろ?」

「現行の基準では違反している疑いがある。不運だが、これに懲りたらぎりぎりの基準を探ろうとするもんじゃない」

「来い」

「うわー! 嫌だー!」

 連れていかれた、明日は我が身か。

「よし、撤収。貴様らもああはなりたくないだろう? 早めに身を引くことだ」

 最後ににらんでから出て行った。


「ここももうダメか……」

「いいサロンだったんだけどなぁ」

 今日で最後と、談笑を続けながら話を続ける。

「じゃあ次のところが一致したら、そこでまた会いましょうか」

 この町では無意味とされるものを持ってはいけないことになっていて、何を無意味とするかは上の加減次第だ。

 趣味のものを語り合う場すらこうやって隠れて行う必要がある。

 まだ、俺の趣味は無意味とはされていないみたいだが、いつ無意味と断じられてもおかしくはない。

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