第1038話:デーガン・サラニ~交わる場所~
「久々に友人と会えることになったんだ」
彼は楽しそうに語る。
「だから、ちょっと明日からは旅行に行くよ」
「その友達と?」
「そうだね、会いに行ってくる」
そう言って、着替えや何やらをカバンに詰め始めた。
会えることになったと聞いたが、わざわざ用意までして向こうへ行って会うとなると、すごい忙しい人なんだろうか。
「じゃあ、行ってくるね」
「行ってらっしゃい」
翌朝早く、彼は出かけて行った。
「さてと」と、私も隠して用意してあったカバンを背負って家を出る、しっかり施錠もしたことを確認した。
やっぱり気になる、わざわざ数日家を空けてまで会いに行く友人ってどんな人だろうか。
ターミナルに向かう彼を尾行して、見つからないように同じゲートをくぐって、街を散策して入る店入る店外から相席になっ
てないことを確認して出てきそうになったら物陰に隠れて、ということを朝からずっと繰り返してたら日も弱くなってきて、結局今日は誰にも会うことなくホテルに入っていった。
どうやら会うのは明日以降らしい。
私もそのホテルの入り口が見える場所の部屋を取り、カメラだけ仕掛けて今日は寝ることにした。
翌朝、日が灯る前に目を覚まして向こうのホテルの入り口を確認しながらカメラの映像を確認する。ついでに昨夜買っておいたサンドイッチも食べる。
さすがにまだ動き出したりはしないだろう。
映像を早回しで見ていた限りではホテルで待ち合わせをしたわけではないようだ。
適当に監視しつつ時間を潰していたら彼が出てきた。
すぐにまとめてあった荷物を掴んで部屋を出る、カウンターに
確か彼は明日の夜帰ってくると言っていた。
ならば会うのは今日か明日、昨日からこっちに来ていることを考えると今日会うというのが妥当なところだろう。
さて、どこで会うのかと思っていたら、今日も昨日と同じ様にぶらぶらと街中を歩き回って、店に入ったり出たりを繰り返していた。
特に、店員以外とやり取りがあるようには見えないし、店員も店員としての対応しかしてないように見えた。
もうそろそろ夜だし、昨日と同じようにホテルに向かうのかと思ったが、ホテルがある方とは逆、町のはずれの方へ向かって、そのまま歩きだした。
「これから会うのかな」
しかし、地図を見る限りではこの先には何もない、商業施設も住宅街も、あって自動工場ぐらいで人はいないはずだ。
怪しい……と思いながらも尾行続行、こんな場所ではどこから友人さんが来るかもわからないから、警戒は怠れない。
そんな感じで、警戒しながら尾行するのを続けていたところ、工場地帯を抜けたところで塀の陰にテントを張り始めた。
まさか、今日はここで寝る気なのか。
さすがに私の方はテントとかは用意してない。
まぁ、この時期なら一晩ぐらい野宿でも何とかなるだろう。
この辺は塀で風は防げるし、雨も降りそうにないし。
向こうの様子が見られる場所に陣取り、一応持ってきていた毛布にくるまって様子を見る。
だんだんなんでここまでしてるのかわからなくなってきたが、ここまで来たら後戻りはしたくない。
しばらく監視していたが、結局誰も訪れることなくテントの明かりは消えていて、気が付いたら寝ていたのか朝になっていた。
「サラニ……、こんなところで何やってんだ?」
寝ている間に彼に気づかれてしまっていたようだ。
「友達に会いに行くって言ってたから付いてきてたんだけど……」
隠していてもしょうがないので正直に吐いた、そして結局誰とも会ってなさそうだったけど、いつ会うのか聞いてみた。
「もう会ったよ、さすがに久しぶりに会うと楽しかったなぁ、また会えるようになったら会いに来よう」
「いつの間に……」
「さて、どうする? 今日一日は遊んでから帰るつもりだったけど、一緒にどっか行くか?」
釈然としないけど、せっかく出てきているんだ、二人で遊んでから帰ることにしよう。
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