第1027話:へアラ・ピロスム~空を飛ぶ部屋~
「部屋にジェットエンジンを着けたんだけどさ」
「なんて?」
また、よくわからないことを言いだした。
前はなんだったか、トイレに入った時と出た時で場所が変わっていたら楽しいんじゃないかとか言ってたか、その前は、と思い出していたらきりがないな。
「わかった、話を聞こう。できるだけ、わかりやすく簡潔にだ」
「いいだろう、これが起動スイッチだ」
手に持ったそれを、彼は押し込んだ。
「ジェットエンジンを着けただけでは部屋は安定飛行しないんだな」
吹っ飛んだ部屋のがれきの中で彼はつぶやいた。
「簡潔にとは言ったけど、発射させろとは言ってない。というか、いきなり発射するな、死ぬかと思った」
起動直後、部屋の壁に叩きつけられて、そのまま部屋が吹っ飛んで爆散。
「もうちょっと前の段階から、話を聞かせろ。「なんで部屋にジェットエンジンを取り付けたか」からだ、朝目を覚ましてから着想に至るまでの経緯は不要だからな?」
「よしよし。そうだな、あれは昨日の昼飯時、六番通りのテラスカフェで何も考えることが無いと空虚に空を見上げながら飯を食っていた、メニューは」
「もうちょっと後から、抽象度を上げて」
「注文が多い奴だな、空を見上げていたら流星が、部屋が飛んだら好きなところに自由に行けて楽しいんじゃないか? 飛ぶと言ったらジェットエンジンだろう、意外と設置簡単だったな、以上で今に至る」
部屋じゃなくて発想が飛んでるよ、思ったが口には出さないでおこう。
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