第1028話:ケレスト・パネン~二人の世界~

「最近流行ってるらしい」

「何が?」

「それが」

 そう言って、指を指した先にあったのは、半クロン程度の透明な球。

 中にはなにかジオラマ的な小物が置いてある。

「スノードームみたいだな」

 雪は舞ってないが、透明な球体の中にジオラマが入ってるというとそれしか思い当らなかった。

「この季節にスノードームってのもどうなんだ、いやこの時期だからか?」

「それはどうでもいい」

 で、これは何なんだ?

「これはあれだよ、ローカルスペースよ」

「ローカルスペース?」

「これに入るんだよ」

「気は確かか?」

「俺は確かだ」

「まぁ高いもんじゃない。試してみようか」


「外で使うようなもんでもないからな」

「どうやって使うんだ? 地面に叩きつけて割るのか?」

「発想が怖い、机に置いて二人で触って起動するんだよ」

「そういうもんか」

「起動するぞ」

「おう」

 球が大きくなって、飲み込まれた。

「ここは……?」

「さっきの球の中だ」

「ああ、球の中に入るってそういう」

「二人でしか入れない空間だ、まぁ外からは丸見えだが……」

「どういう目的で使う物なんだ?」

「どういう目的も何も、そういう物だよ。カップルで入って雰囲気に酔うんだ。記録も残せるから、置物として結構映えるんだこれが」

「ああ、そういう。なるほどな……、まてよ? これ、俺とお前で入ってる今の記録も残ってるのか?」

「まぁ、記録に残す設定にすればだな」

「消せよ?」

「消すよ、俺だって勘違いされたくはない」

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