第1012話:ヘクシア-16~夜の温泉宿~

「マスター、お帰りなさいロボ」

 ロビーの陰で待機状態になっていたら、マスターが温泉から戻ってきたのだが。

「あ、ヘクシア。ルルニアがちょっと温泉でのぼせちゃって、部屋まで連れて行ってあげて」

 無駄に長湯してしまったのか、真っ赤になっている。

「またマスターは……ありがとうございますロボ、代わりますロボ」

 メーティカより、マスターを受け取り、背負う。

 いつもならこんな狩られた獲物みたいな持ち方はやめろと騒ぐのだけど、気絶しているようでぐったりしたまま無抵抗だ。

「メーティカさまはどうしますか?ロボ」

「私はもう少し散歩してから戻ります。布団敷いておいてください」

「了解しましたロボ」

 そこでメーティカとは別れ、部屋にマスターを運ぶ。

 指示通り布団を二組敷いて、片方にマスターを寝かしたら特にこの先は何の指示もない。

 フリータイムだ。

 旅館の中にいる生体の状態はすべて把握した。



 とりあえず他グループの部屋で暴れまわっているルーニードのところへ行く。

「ルーニードさん、そろそろ部屋に戻りますよロボ」

「お、ロボか。お前も参加してくか?」

 この部屋ではボードゲームをしていたようで、先ほどロビーで話しかけてきた少女が圧倒的な強さを見せたらしい。

「メイナムさまでも勝てなかったのですか?ロボ」

 驚きだ、生身の人間でメイナムに知略ゲームで勝てる者がいるとは思わなかった。

「どうやらメイナムの強さの秘訣を知ってて封じたらしいぜ?」

「なるほど、ロボ」

 少し興味がある。

「では、私と一局やりませんか?ロボ」

「……かまいませんよー」

 相変わらずの間延びした返事、お手並み拝見といかせてもらおう。


 なるほど。

 強さの秘訣はデバイスを使って視界に情報を表示させているんだ。

 ズルだな?

 まぁこのままばらしてもいいんだけど、ハックして利用してやろう。

「だめですよー」

 む、気付かれた。

 これは難儀しそうだ。

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