第1006話:メーティカ=メーティカ~温泉饅頭~

「あっ! あ~っ!」

「どうしたのメーティカ?」

 湯船に浸かって早々、変な声を出してしまった私を心配してか、ルルニアさんが何事か聞いてくる。

「いえいえ、ここの温泉だったんだなぁって」

「何が?」

「温泉の仕入れ先です」

「あなたのところ温泉なんて仕入れてたの?」

「はい、使うんですよ。温泉ベースの飲料も結構種類があってですね」

「へぇ」

「でも、全然注文が入らないので、余った分は普段のお風呂に使っちゃいます」

「まぁ、本来の用途ね」

「でも温泉って飲むと健康にいいらしいんですよ」

 オーナーが持ってきてたメニューには確かそんなことが書いてあったはずだ。

「そうなの?」

「物によるらしいんですけど、ここのは普通に飲んでも健康にいいんですって」

 最初は鉱石種族向けの飲み物かと思って調べてみたんですけど、普通の人の健康にいいって話が出てきてびっくりしたんですよね。

「じゃあ今度注文してみようかな?」

「おすすめです」

「まぁー、健康にはあんまり興味はないんだけど」

「ルルニアさんはもうちょっと健康に気を使ってくださいよ、結構意味もなく夜更かしとかするタイプでしょ?」

「いやいや、最近はロボがおいしいご飯も作ってくれるし、いい時間に寝ることを推奨してくるから早寝だよ」

「思いのほか健康的ですね……」

「ロボありき、だけどな」

「そういえば、そのロボさんはどこに?」

「ロビーで待機させてる。あいつのあの見た目でこっち入れるわけにはいかないし」

「別に性別と見た目が一致することあんまりなくないです?」

「ロボだから、温泉で疲れが取れるとかもないでしょ」

「まぁ、それは、そうでしょうね」

 ロボの人の少しだけ悲しそうな顔が脳裏に浮かぶ。

「今度、ロボの人もうちに連れてきてくださいよ、いつも来るとき一人じゃないですか」

「あいつ、何も飲まないよ?」

「いえいえ、彼ならこの子にゲームで勝てるんじゃないかなぁって思って」

 さすがにメイナムでもロボの人の演算力に勝てるとは思えない。

「……あー、なるほどね。一回やらせてみようか。今度連れて行ってみる、それとも……いや、今度連れてくね」

「待ってますよ」

 友達なのだから、遊びの約束ぐらいするだろう。

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