第1000話:皇勇人ⅡⅩⅢ~温泉旅行~

 カランカランとアナログなベルの音が響く。

「大当たり~!」

 珍しくガラガラ式の福引をやっていたので、一回まわしてみたら見事に当たった。

 温泉旅行のグループチケット、人数無制限。

 誰を誘っても構わないということだけど、誰を誘おうか。


「というわけなんですけど」

「どういうわけです?」

 とりあえず、フォーレトルーンに来てメーティカさん達を誘ってみたけど、なんとなく気恥ずかしくてチケットが当たって何人でも一緒に行けるってことを伝えてみた。

 しかし、どうにも真意が伝わってないように見える、自慢と取られてセンサーが鳴るかもしれない。

「誘いに、来たん、だろ? こいつは、鈍いから、伝わらないぞ?」

 そんなことを考えていたら、メイナムが助け舟を出してくれた、気が利くな。温泉ではアイスをおごってやろう。

「え、私を旅行に!?」

「まぁそういうことです、他に誘いたい人います?」

「いますいます! 友達に連絡とってみますね!」

 よかった、喜んでくれたみたいだ。

 というか、メーティカさん友達いたんだ。


 当日、集合場所には結構な人数集まっていた。

「あれ、あなたは」

「ああ、スメラギハヤトくんだったっけ?」

「覚えてたんですね、会ったのもう三年ぐらい前じゃないですか?」

 メーティカさんが誘ったらしい彼女は、俺がこの世界に来た時に案内を担当してくれた人だ、確かルルニアさんだったっけ。

「まぁ、前にも言ったと思うけど、担当した人は全員覚えてるし」

「メーティカさんの友達ってルルニアさんだったんですね、そちらは?」

「ロボです」

「ヘクシア-16ですロボ、よろしくですロボ」

 結構顔がいいお兄さんだと思ったら、なんか変な語尾でしゃべる、そういう世界の生まれなんだろうか。

 ルルニアさんの彼氏かなんかかな。

「よう、坊主元気か?」

「あ、モンスさん? なんでいるんですか?」

「そりゃあメティメティに誘われたからよ」

 本当か? メーティカさんがモンスさんを誘うってことはないと思うけど……

「ごめんなさい勇人君、オルマンに話してるときに話を聞かれてしまって……」

 横から出てきたメーティカさんが釈明する。

「ああ、そういうことですか。別にいいですよ、にぎやかな方が楽しいですからね」

 実際のところ、女性ばかりというのも緊張するし、多少おっさんもいた方がいいんだ。それもこういう結構盛り上げがうまいおっさんというのがいい。

 他にも久しぶりに顔を出したハンターギルドでも何人か声を掛けてはいたけど、そっち方面は誰も来ていないんだよな、なんでだろう。

「さて、そろそろ出発しましょうか」

 ターミナルから目的地最寄りのゲートへ飛んで、その先はバス。

 秘境の秘湯という話だし、なかなか楽しい旅行になりそうだ。

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