第999話:ボニアス・コラニン~銀河鉄道~
「旅行へ行こう」
「旅行?」
「そう、日常から脱して普段と異なる環境で過ごすことで身も心も魂までもリフレッシュ! そうすることで普段の変わりの無い日常ですら輝いて見えるってものさ」
まぁその理屈はわかる。
私も前は旅行によく行っていたものだ。
「旅行っていっても、どこへ行くのさ」
「銀河鉄道だよ」
「あぁ銀河鉄道ね。銀河鉄道?」
銀河鉄道、懐かしい響きだ。
昔はよく乗っていろんな星へ行ったものだけど、そういえばこっちに来てから乗ってない。
というか、
「そもそも銀河無くない?」
そう、この世界に銀河は無い。
星空はあるが空の向こうに街があるという話だし、そこも列車で行けるような場所ではなかったはずだ。
「最近できたらしいよ?」
「銀河って最近できるものなの?」
「知らんけど、銀河鉄道が最近オープンしたってメルマガが来たんよ」
「へぇ」
まぁ、何が起きてもおかしくない世界ではあるか。
「で、その銀河鉄道に乗りに行くの?」
「そう、楽しみじゃない?」
「いいね。乗りに行こうか」
して、当日。
「ここが銀河鉄道の駅?」
平原に駅舎がある、田舎の駅舎という感じで、銀河鉄道がここから発車するという雰囲気は無い。
「本当にここなの?」
「地図ではここになってるけど……」
「とりあえず入ってみようか」
自動券売機には入場券の項目があるだけで、どこ行きという項目は一つもない。
「もしかして、銀河鉄道のレプリカの展示とかなんじゃない?」
「いやそんなはずは……」
改札口を抜けて車両までくる。
「おぉー」
「立派じゃん?」
車両は立派で今にも走り出しそうだ。
軌条は伸びてはいないが銀河を走る銀河鉄道には不要なのかもしれない。
「ここから入れるみたい」
「うわー、きれい!」
車内は豪華絢爛といった感じで、移動用にこんな装飾だと気後れしてしまいそうになる。
「ほかにお客さんいないんだね」
「結構意外」
最近オープンしたばかりの銀河鉄道なんてとても混みそうだと思っていたのに。
「あれ?」
「どうしたの?」
「いつの間に出発したの?」
「え?」
窓の外を見ると、無数の星が果ての見えない黒を背景に輝いていた。
「銀河鉄道ってワープするの?」
「いや、しないでしょ」
どういうことかと、さっき入ってきたドアのところまで行くと、なんということも無いように開いた。
「え!?」
「あれ?」
そこは先ほどの駅のホーム。
「つまり、これは……」
「窓に銀河が張り付いてる?」
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