第947話:ルーテン・モウコク~力を得る~
「お兄さん、ちょっとこちらへ」
町を歩いていた時、路地裏から
顔を隠した奴に声をかけられた。
あからさまに怪しかったが、話ぐらいならと思いほいほいついて行ってしまった。
まぁ、結果から言ってしまえば失敗で、その時にもらった力の球とやらを押し付けられて今逃げ回る羽目になっているのだ。
「何が力の球だ、こんなもん!」
怪しい覆面野郎はこれを使えば世界を統べることも可能な力を得ることができると言っていた。
俺にこれを手渡した後、「それを使いたい者はたくさんいる」と、それだけ言って路地裏の闇に消えやがって、その直後に謀ったかのようによくわからん奴らに追われているってなわけだ。
「そうだ、こいつを使えば……」追っ手を蹴散らすのも余裕ってもんだぜ、と思ったが踏みとどまる。
俺にはこれを使う勇気がない。
この世界を統べる力なんてどう考えても荷が重い、このピンチを切り抜けるためだけに使うようなもんじゃない、と思う。
俺が背負うには重すぎるもんだと、そう思うのだが……
「それをこんな譲渡可能な形でラッピングされた状態で任されてもそれはそれで荷が重すぎるんだよなぁ!!!」
追ってくる奴らに渡すのもリスクがでかい。
これを追ってるってことは力を欲している奴らで、今の追いかけ方を考えればまともな奴らでない可能性が高い、そんな奴らに「はいどうぞ」と渡せるものでもないのは確かだ。
ただ、どう考えてもわけもわからない状態で渡されて逃げ回っているのは理不尽というもの。
逃げながらあの覆面野郎を見つける必要が俺にはあるのだが……
「ここまでか」
とまぁ、特殊部隊の出とかであればまだ逃げ回れたのかもしれないんだが、残念ながら一般の出だ。
相手側の巧みな誘導もあって、袋小路に追い詰められてしまった。
「お前ら、これをどうするつもりだ?」
力の球を懐に隠しながら精いっぱいの強がりで言う、が追っ手はため息まじりに
「これも何もそれはただのガラス玉だよ、あんたはうちの爺様に担がれたんだ」
なんてことを言いやがる。
「へ……? じゃあなんで追って?」
「なんでも何も、信じたまま周りにびくつきながら生きるのもかわいそうだろう? ここまで逃げ回られるとは思ってなかったからびっくりしたが……、これを伝えたかっただけだから。あ、それは好きにして構わないよ。まだ渡してくれるほどにこちらを信用することもできないだろうからね」
彼はそれだけ告げて去っていった。
その後追っ手は現れず、鑑定屋に持ち込んだ結果単なるガラス玉であることが確定して、改めて謝罪の手紙と品が家に届いた。
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