第923話:コウガウ・イオク~標準規格~

「腕壊れたンけど」

 義手が砕けた、頑丈に作ってもらってはいるけど、使い方が使い方なので、頻繁に壊れる。

「またかよ、お前。稼ぎの方は心配してないがよぉ、お前の義手高いんだからよ。もっと大事に扱え」

「そうは言うけどさ、こう、でかいやつを狩る時はな? 力入れるだろ」

「その言い訳は前にも聞いた、出力でなく技でやれ。物の出力には限界があるが、うまくやる方法はいくらでもあるだろうが」

「技はあるンよ、元よリ極めた技が力で右腕を効率的に武器にする技だからな」

 それゆえ、体が未熟な時に右腕を振るって壊して以来こうして特注の義手を使っているわけなんだが。

「それを改めろ、特注品なのに量産品ペースで生産するのは無理だぞ」

「もうちょい丈夫にするわけには?」

「無理、とりあえず今日のところは標準品をくっつけておいてやるから、しばらく狩りはやめておけ。……いや、そいつを一週間ぶっ壊さずに使い続けられていたら行ってもいいぞ」

「やってやろうじゃねぇか」

 そんぐらい余裕だわ。


「すまんぶっ壊した」

「なるほどな」

 標準規格とはどんな調子かと素振りをしたら壊れた。

「脆くないか?」

「戦闘用じゃないからな、付け替えるから肩出せ」

「おう」

 すぐに同じものが出てきて腕が付く。

「早いな」

「量産品はいくらでもあるからな。毎秒壊しても間に合うぐらいの速度で量産されている」

「なるほどな……」

 新しい戦い方をひらめいた気がする。

「ぶっこわれても即時交換可能な腕に活路を見出すぐらいなら武器を持て武器を。持ち替えるだけで交換できるぞ」

「いや俺の武器は右腕だけだからな……」

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