第918話:ライカ・シフテグ~ダンサブル~

 軽快な音楽のドームをそこらで展開して体でそれを表現する一団がいる、つまるところ彼らはストリートダンサーである。

「珍しいがいい動きだな、何か参考にしてるのか?」

「ああ、ニシナンハクの方の一地方の民族舞踊をな。いいだろう? 2000年物の成熟した動きさ」

「どおりで、どこのライブラリで見つけてきたんだ? さすがに万世で探したとは言うまい?」

「そりゃあな、あんなところで時間使うぐらいなら動きの一つでも磨くよ」

「で、どこだよ」

「映画さ、最近はいろんな地方映画を見ていてな、その中で気になった動きがあればその映画の元の世界を調べて、検索掛ければすぐに引っかかる。効率いいぜ、お前もやってみな?」

「はーなるほど映画ね。インド映画とかのダンスは好きでよく見るが、いろいろ見てみるか」

 まぁみんな、自分のダンスの質を高めたり、ダンスをすることをただ楽しんでいる。そういう連中ばかりなんだが、たまには変な奴も来る。


「よぉ、ダンスバトルだ」

 平和なストリートダンサーのグループだけではない、時たまこうして好戦的なストリートダンサーが現れて、ダンスバトルを挑んでくることがある。

 時たまといったが結構頻繁に来る、ていうか、こいつら新しい奴がグループに加わるたびに来る。

 バトルを挑んでくると言っても縄張り争いみたいなことをしているわけではなく、単純に対決の体裁で行われる交流のような物だ。

「今日の新メンバーはそいつか……」

「ああ、トクニコの生まれらしい。まぁ、手柔らかに頼むぜ」

 トクニコ、確かダンスの文化はない世界だったような気がするが、他では見ない独特の体つきもしているし、4節ある腕と4脚でどのようなダンスをするのか興味がある。

「じゃあこっちは俺が」

 新しく練習してるステップを見せてやりたいしな。

「ダンスバトル、スタートだ!」

 音楽が流れだす。


「見たことが無い動きだった」

「ああ、見たことが無い動きだったな」

 今日見たダンスの感想を話し合うが「見たことない動き」以上の感想にはならない。

「なんでだと思う?」

「参考にできる動きじゃなかったってのと、あんまりいいダンスじゃなかったからかな……」

「まぁ、この世界に来て初めてダンスってものの存在を知ったって言ってたからな」

「でも楽しそうなのは良かったな」

「ああ、それだけは良かった」

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