第917話:アカイド・ロイボ~白昼夢~
「どうした、ぼけっとして」
「え?」
声を掛けられて気が付く。
「えーと、確か僕は蝶を目で追っていて」
なんでだっけ?
「夢でも見てたのか? 立ったままさ」
そういえばここは室内で、外につながる窓やドアも遠くて、蝶が飛んでいるわけもなくて、目で追っていたはずのそれはどこにもいなくて。
「ごめん、なんだった?」
「本当に大丈夫か? お前が呼んだんだぞ?」
「あれ? そうだっけ、何で呼んだんだろ」
記憶がない……ような感覚はない。
起きてからここに来たまでの記憶はあるし、昨日寝る前の記憶もある。
だけど、ここに来た理由は思い出せないし、こいつを呼んだことも思い出せない。
「ごめん、忘れた……」
「はぁー? しっかりしろよまったく。まぁ、理由が思い出せないのはいいや。どうせ暇だったし。どうする? 飯でも食いに行くか? *****」
「?」
「どうした? *****」
何か、おかしい気がする。視界の端に蝶がいた気がして、そちらを見るが何もいなくて、*****に向き直っても、あれ、こいつは、誰だっけ?
「***** *****」
「どうした、ぼけっとして」
「え?」
声を掛けられて気が付く。
「あれ、なんだっけ? 蝶を目で追っていて、いなくて……? あれ?」
「何を言ってるんだ、蝶ならいっぱいいるだろ、その辺に」
周りを見てみると、色とりどりの蝶がひらひらと舞っていた。
「あれ?」
「大丈夫か? 昨日の夜はちゃんと寝たか?」
「寝たと思う」
昨日寝る前の記憶もあるし、朝起きてからここまで来た記憶もある。
でも、それは
「なぁ、僕ってどれくらいの間ぼけっとしてた?」
「うん? 数秒ぐらいじゃないか? 目をあけたまま意識が飛んでる感じがあったから声をかけたんだが」
いつの記憶かわからない。
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