第902話:ウナ・ローンⅦ~フィールドワーク~

「助手君! 外に出るぞ!」

「どうしたんですか博士、何か思いついたんですか?」

「思いつかないから外に出るんだ、いわゆるフィールドワークという奴だよ」

「あー、フィールドワーク。フィールドワークですか」

「なんだ、なんか乗り気じゃないね。あんまりフィールドワーク好きじゃなかったっけ?」

「だって、前にも博士この町の隅々まで探索して、全部浚ったじゃないですか」

 まぁそんなこともあった、ずいぶん前だけど、確かにあった。

 あの時は助手君は喜んでついてきたというのに、今日はなぜこうも乗り気ではないのだろうか。

「そうだよ、だけども何か変わっているかもしれないし、今日の目的はこの町じゃなくて、外へ出る」

「外へ!? それこそ本当に珍しいじゃないですか、最後に出たのってあの時じゃないですか? 大海横断レースの時でしたっけ?」

「前々回のだな、前の時はめんどくさくなって参加しなかったから、本当に久しぶりの外だ、魔法のある世界は久しぶりだから、どれぐらい進歩したか楽しみだ」

 何かネタになりそうな、斬新で面白い魔法が流行っているといいんだけど。


「よし、携帯端末デバイスに魔法は入れなおしたな?」

「はい、必要になりそうなものは一通り」

 デルヴィアの外に出るから、普段はテルヴィアの中では使えない魔法をインストールしなおす。私では使えないから、助手君のにだが。

「久々だけど、使い方を忘れたりはしてないよな?」

 門を出る前にきちんと全部、何も抜けがないことを確認して、二度チェック。

「さて、行こうか。」

「そういえば、どの町行くんですか?」

「うん? そうだなぁ、行ったことのないところ……」

「博士はだいたいどこも行ってないのでは?」

「まぁ、そうなんだが……」

「そうだ、じゃああそことかいいんじゃないですか?」

「どこだ? 割と魔法の多様性があるところがいいんだが」

「テロン街とかは多様性がすごいって話ですよ」

「そこに携帯端末デバイスを使っても魔法が使えない私が踏み込むのはさすがに死ぬかな……」

 いや、確かにフィールドワークの場所としては最適に近いぐらい知見はたまると思うんだけども……

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