第890話:キタラ・タークス~強さの弱さ~

「強くなりすぎた」

「うん?」

 真面目な顔でよくわからない相談をしてくる、こいつは俺と付き合いがあるのが不思議なぐらいの上位ランカーで、俺は下も下で底辺ランカー、ランカーであることすら危ういレベル。

「いや確かにお前は強いけど、強くなりすぎたってことはないだろ?」

「強いに越したことはないと思ってたんだけどなぁ」

「特にこの強さがすべての場所で、強くなりすぎたってなぁ。強者なりの苦悩?ってのは俺にはわからんのだけども、そういうのがあるんか」

「強者なりの苦悩……、まぁそんなところだな……」

「悩みがあるなら理解できなくても聞くぞ」

「キタラ……、ありがとなぁ……」

 まぁ、なんで付き合いがあるのかわからんが仲はいいんだ、悩みぐらい聞いてやるさ。

「強くなりすぎてなぁ、弱さがなくなってしまってなぁ」

「弱さが無くなって……?」

「ああ。俺もなぁ、もっとお前らと弱さを共有したかったんだけどなぁ」

 あー、そういうことな。

「いや別にお前も弱いところあるだろ」

「えぇ……どこに……?」

 こいつのこういう無意識強者発想むかつくなぁ~

「今もそうだし、お前普通に酒に弱いし、飲むとすぐ弱気になって涙目になるじゃん」

「それでもなぁ」

「お前の弱点なんて、いくらでもあるんだよ。だから、そんな悲しそうな顔すんな」

「そうなのか……、もっと強くならいとな……」

「いや、なんでそうなるんだよ」

 わからんやつだな……


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る