第889話:コメーラ・サニフォン~要素抽出~

「見えないものを見るにはどうしたらいいと思う?」

「は、見えないものが見えるわけないだろ」

 意味わかんねぇ問答が好きなやつ、俺から見たこいつはそういう印象だ。

「表現を少し変えよう、見えるようにするためにはどうしたらいいと思う?」

「そりゃあ、物によると思うがなぁ」

「うん、正解」

「あ?」

「全部を見れるようにする方法はないからね」

「馬鹿にしてるなら行くぞ」

 半腰上げて、本題を催促する。

「ああ、待って待って。いやなに、隠れて見えないものを見るならば、隠しているものを取っ払ってしまえば見えるようになるだろうとね」

 なにやら携帯端末デバイスを操作して、起動する。

 周りの景色が一変した、机は消え、壁も消え、天井も消え、床も消え。

 かといって外の景色が現れるかといえばそうでもなく、表現のしようのない怪物のようなものが蠢くものが現れた。

「おおおい、なんだこれ!?」

「世界の表層レイヤーを見えなくしたのさ。心配しなくても僕の周りにいる人だけが見えなくなるだけだから……」

 なんてことのないことかのように語るが、そもそもほかのやつからどう見えているかなんて話はしていない。

「安全なんだろうなこれ? あいつとか襲ってこねぇ?」

「大丈夫だよ、これはこれを隠していたものを見えないようにしただけ、だから実際はそこにあるし、そもそも普段からあれらはそこにあるものだ」

「おおう、わかったからさっさと元に戻してくれよ」

「はいよ」

 携帯端末デバイスを操作して、元の景色に戻す。

 尻の下にも椅子が戻ってきて、安心感が増したが……

「なぁ、さっきのやつらも今見えないだけでいるんだよな?」

「うん、いるよ? 干渉してこないかはわからないけどね」

 見えないだけで安心、できるもんでもないのか……?

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