第888話:サウガニ・カニバン~無気力症~

「うーあー」

 起きれない、布団に入ったまま、うなることしかできないし、体を起こして立ち上がるなんてもってのほかだ。

 実際は声を出すのも面倒臭い、意味のある言語で発音できない。

 こんなことをしていると、だんだん自分の形もわからなくなって丸い塊になっているのではないかと錯覚する。

 私の体ってどんな形をしていたかも、はっきりしなくなってきて町でいつか見かけた球状の体を持つ人はこんな感じなのかなって、そんな想像が頭の中で回る。

 いや、別にあの人たちは無気力であんな姿になっているわけじゃない、たぶん。

 しかして、腕の動かし方もわからなくなってきた、上がる上がらない以前に腕が認識できていない。

 どういう状態なのかもわからない。

 動かし方も忘れてしまっているので、もうこのまま二度寝してしまおうか、確か用事も何もなかったはずだし。

 でも、このまま眠って起きた時に体が動くのかどうかわからない。

 もし次起きたときに球状になってたらどうしよう。

 そんな心配も面倒になってきた、と最初から開いてなかった瞼を閉じて、まどろみの訪れを待つ。

 ……眠れない、体は動かないが、眠れるわけでもない。

 じゃあ起きれるかといえば起きられない。

 だらだらと時間と自分の中の何かを消費しながら形を失っていく……

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