第887話:ジュア・ルペコー~不審ショップ~
「うーん」
私の作ったものを売っている店があると聞いて覗きに来てみたわけだが、どうにも怪しい。
路上でござ敷いて、そのうえに商品を並べてる感じの露天商って感じ、私の作った物も売っているが、関係ない物もいくつか売っている。
私も自分の店を持って販売しているが、あんな人が買いに来たことはなかったと思うし、値段がなぜか非常に安い。
転売って感じでもないよなぁ、そもそも私のところではあんまり売れてないものが置いてある感じだし上乗せどころか安く売っている……
何のためにあんなことを……?と思いながら遠めに見ていると、お客さんが来た。
少し距離がありすぎて声は聞こえないが、店主は座ったまま、お客さんは中腰で商品に触れずに物色、指をさして選んだ商品を決済、軽く手を振って受け取らずに去る。
ん?
商品を受け取らずに、お金だけ払って去っていくというのは……?
不審さ極まる……
不審さ極まるぞ……?
どういうことだ? 仕方ない、ちょっと声をかけて話を聞いてみることにしよう。
「あのー」
「はいはい、どれが欲しいんでっ」
店主は私の顔を見るなりヤバイという顔をしてござを掴んで走り出した。
「ちょっ、待って、そんなことしたら……」
商品が、ぶちまけられて……?
ない、ござの上にはいろんな、少なくとも20点は商品が置いてあったと思うんだけど、一つも地面にばら撒かれていない。
「えぇ……?」
そして気付けばもう店主は見えるところにはいなかった。
「何だったんだろ……?」
帰って自分のお店、カウンターの中でちまちま売り物を作りながら店番をしていると先ほどの店主が申し訳なさそうな顔をして入ってきた。
「どうも」
「あ、どうも」
「あー、さっきは逃げてすみませんでした、どっかで俺の話聞いてきた感じですよね?」
「ええまぁ」
なんともおかしな態度である。
「一応、謝りがてら説明しに来たんですけど、つまりは俺がやってるのは……」
説明を要約すると、商品サンプルを見せて、買いたいって人がいたらそれが売ってる場所を教えるっていう商売をしているらしい。
ただ、サンプルも買っているわけではなく、持っている人から見た目だけのデータを取らせてもらい、ござの上に見た目だけ出しているとのこと。
逃げたのはなんとなくやましい感じがしたかららしく、今は実際に買って見本のデータを更新しようということらしい。
「なんというか、勝手に宣伝代行?」
「まぁ、そういうことです」
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