第867話:ヒライ・スリアム~魅了スキル~
背筋に悪寒が走った。
「……?」
この感じは精神干渉系の攻撃が耐性に阻まれた時の感覚だ。
慌てて辺りを見回すと、人ごみの中で異質な雰囲気になっている一帯があった。
その中心にはとても見目麗しい女性がいて、少し周りに目をやるとこの辺りのすべての者の目がそちらを向いていた。
さっきの精神干渉の発信源は十中八九彼女だろう、不思議と怯えているようにも見える。
まったく意図がわからないが周囲の反応を見る限り、何人かにはかかっているらしく、彼女を見る目がおかしい。
どことなく虚ろで、ほほを紅潮させ、口が半開きになっている。
これは、魅了系かな。
街中で突然魅了スキルを発動するなんて何を考えているんだ、自殺行為か、それに準ずる何かだ。
そんなことを自分でやっておいて何を怯えているんだろうか。
あ、逃げ出した?
数人がそれに付いていってしまって、もしかしてと思い僕も後を追う。
逃げるルートは人通りの少ない道を選んでいて、追う人は減らなくて、なんだか誘っているんじゃないかと思ってしまうぐらいの逃げ方だ、何らかの才能を疑う。
それでも逃げているのは本気なようで、徐々に追う人は減っていく。
魅了は時間で減衰していくのかもしれない。
ようやく追うのが僕だけになって、やっと追いついた。
「ヒぃッ、なんで……」
本気で怯えた声を出された、もう逃げ切ったと思っていたんだろう。いやこれでは僕が悪役みたいじゃないか。
「怖がらないで、僕は君の魅了にはかかってないから」
「……じゃあなんで?」
「君が心配になったからだよ。君、自分の魅了スキルを制御できてないんだろ?」
「なんでそれ、」
「見てればわかるよ。あんな人ゴミのなかで全方位に対して魅了をかけるなんてテロか自殺かのどっちかでしょ
「……うぅ」
おっと、落ち込ませてしまった。
しかし、いちいち反応がかわいらしい。
精神干渉以外の魅了の才能だなこれは……
「まぁ、僕の知り合いにそういうのを何とかできる人がいるから、紹介してあげようと思っただけ」
「あの、何で良くしてくれるんですか……」
「ん、まぁ、なんていうか、君が可愛かったからだよ」
これでは魅了されているのと変わらないではないか。
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