第847話:フライ~終わりの際の話~

 私は最後に夢を見た。

 周りの大人がどんどん消えていって、私は気付けば一人ぼっちになっていた。

 誰かいないのかと、誰もいなくなった街の中を、何かから隠れるようにして歩いて回って、それに見つかってしまった。

 姿は曖昧にもわからない。

 まるで固まりきれなかった闇のようでもあって、まぶしい何かのようでもあって、でも何か恐ろしいものであることだけははっきりとわかって、

 私は誰かを探すことよりも、それから逃げることを選択した。


 隠れるのに向いていない、いつも使うメインストリートを外れるとみたこともない暗くて狭い道が伸びていて、でもあれと比べたらと一歩を躊躇っただけで、私は闇の中へと進んでいった。

 夢の中だもんね、知らないところは怖くなるなんてあたりまえじゃないとふと頭の中で浮かんで、そうだこれは夢だった、じゃあ現実の世界は今どうなんだっけ?と考えた時、ああこれは夢じゃない、ただの現実であって、さっきまでの記憶なんだということに気付いた。

 誰もいなくなってしまった世界で、私もあれからなんとか逃げたけど、路地裏で動けなくなって見ているのがこの夢だった。

 もう二度と目覚めることなんてなくて、この路地裏の闇に解けるようにして消えて行って、そのまま死ぬのだと、

「もしそうならこんな夢じゃなくて、もっと幸せな夢ならよかったのに」

 意識は、糸が途切れる様にして消えた。




「やっと見つけたよ」

 途切れた糸の反対側、私は卵の中で目を覚ます。

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