第785話:シンフー=シャーマ~そういう時はドーナツだ!~

 なんか、何もしていない期間が長すぎて死にそうになっている。

 家の絨毯の上で背中にビーズクッションを載せて、重力に挟まれて、無気力感を味わっている。

 このまま潰されて消えたい。

 そんな気分になってた時に家の部屋のドアが開いた。


「うーす、邪魔すんぞー」

 昔からの付き合いの奴だ。

「やぁーぱり死んでたか、SNSの方の投稿が止まってたからよぉ、まぁ心配してきたわけだが、本当にめんどくせぇ奴だなお前は」

「……何しに来たんだよ」

「言えてねぇぞ、口開いたの何日ぶりだ」

「……わかんね」

「ていうか、鍵ぐらい閉めてから死んでくれ。俺は合い鍵持ってるからいいけど、鍵さす前に開いてめっちゃビビったんだからよ」

「……ああ気を付けう」

 鍵閉めてなかったのか、ダメだな。

 死んでるときはダメだ、そういうことすらできなくなるし。

「ほれ、ドーナツ買ってきたから食えや」

「ドーナツ?」

「そうだよ、ドーナツ。知ってるか?こういう時はドーナツなんだ」

 落ち込んだときにドーナツ……聞いたことないな。

「何か謂れでもあるのか?」

「ん? そんなもんは知らんが、ドーナツうまいだろ?」

「そうだけど」

 やっと声が上手く出るようになってきた。

「だからこういう時はドーナツなんだよ、甘くてうまいからな。山ほど買ってきたから好きに食って元気出せ」

 そんな理由でドーナツて、まぁ確かに甘くてうまいものは元気が出るけど……

「あ、おいしい」

「だろう? 俺もこの店のは結構頻繁に買うんだよ。元気があっても元気が無くても」

 それはもしかしてお前がドーナツ好きなだけでは?

「あれ、飲み物は?」

「買ってきてないが」

「ドーナツめっちゃあるのに飲み物ないってどういうこと……、口の中えらいことになるでしょ。ちょっと待ってて、お茶いれてくるから」

「大丈夫か?」

「大丈夫だよ、もうね」

 よいしょと、クッションを退けながら立ち上がりってキッチンに向かった。

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