第767話:ムロ・コナラ~擬音議論~

「いまのそれどういう意味?」

「何が?」

「いやその、今のさ、ぴよーんって擬音? なにを意味する擬音?」

「え、マジかお前、知らないの?」

「聞き流してたけど俺も何の音かわからんかったよ」

「実は俺もだ」

「1対3だ。で、なんの音だったんよ?」

「灯りを消した時の音だよ」

「灯りを?」

「灯りを消した時の音は「パチン」だろ」

「いや、ピピじゃね?」

「俺はパンだと思う」

「いやそれ何の音だよ」

「灯りを消した時の音だけど」

「はぁ? 灯りを消した時の音はぴよーんに決まってるだろ、どういう消し方だよ」

「こう、手を叩くんだよ」

「いやいや、お前んとこそれで消えんの?」

「うちはそうだったな」

「じゃあお前んところの「ピピ」は?」

「灯りのスイッチを押した時の確認音だよ、ピピっていってから消えるんだ」

「あー、それはなんとなくわかる気がする、うちのぴよーんもそれだ」

「じゃあ「パチン」は?」

「そりゃあスイッチを切り替える音だよ、こううちの方はボタンを切り替えて灯りを点けたり消したりするんだけど、そのスイッチがパチンっていう」

「へぇ、なんか面白いな」

「生まれが違うから結構いろいろ差があるな」

「他にもなんかあるか?」

「あーなんか違いそうな音? 音でいいか?」

「音が一番わかりやすそうだしな」

「でもうちの音他と違うんだぜ? ってわからなくねぇ?」

「なんか違いそうな音適当に出して何か当てようぜ」

「お、いいねぇ面白そうだ」

「よし、思いついた、「シュイン」」

「こう、包丁をすり合わせる音」

「いやそれはうちでもシュインだしどこでもシュインだろ」

「どっちかってーとシャキンじゃね?」

「そういやそうか、じゃあなんだ?」

「扉の開く音だよ」

「どんな扉だそれ」

「うちでは「ギィ」って感じだ」

「うちは「ひゅいぃいん」だな。こう、光の幕を潜るんだよ。この辺じゃあんまり見ないけど」

「「シュイン」はこう金属の自動扉でな、スライドして開く」

「それだと「ガー」じゃね?」

「それは低層とかの扉の音だよ」

「なんだと」

「なんだよ」

「いやそれこそ世界の文明の差だろ」 

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