第766話:カラモ・ガズラ~こんなファンタジーいやじゃ~

「魔法! 魔獣! 異世界!」

 死んだときはどうしようかと思ったけど、こんな世界に来れたのなら問題なしだ!

 いざ、剣と魔法の冒険の世界へ!


「剣なんてうちじゃあ扱ってないなぁ、最近は剣に拘る客も少なくなってな? 昔は「武器と言えば剣!」みたいな客もいっぱいいたんだがなぁ」

 武器やを探して剣を買いたいと言ったらこう返された。

「今だとどういう……?」

「最近の流行りはこれだ、スタックガン」

「スタックガン……?」

「銃だよ銃、着弾点が空間ごと格納される銃でな、まぁ便利だからよく売れてるんだ」

「それは、魔法で?」

「んー、魔法みたいなものだが、科学技術だって話だな。どう違うのかは俺にはわからんが」

「科学技術……」

「おう、買ってくか?」

「いや、いいです……」


「剣のレンタルならありますよ」

「あるんですか!」

 魔物ハンターギルドというところに来た、ここでは魔物や魔獣を討伐する仕事ができるという話だ。

「はい、ですが……、扱ったことあります?」

「無いですけど、何とかならない?」

「貸し出しに問題はないんですが……、事故が起きても自己責任となるのでこちらに同意のサインを」

「あ、はい」


「何はともあれ、魔獣の出る森にやってきたぞ! 武器は剣! 思いのほか軽いなこれ」

 剣ってもっと重いものだと思ってた、というかこれで魔獣とか倒せるのか、この世界で言う魔獣がどんなもんか知らんけど。

 たぶん最初に紹介された森だし、大して危険な奴はいないだろう。


 やぶを漕いで、森の奥へ進むと小動物、目つきは鋭く口元は他の動物の血で塗れている。

 おそらく魔獣の類。

 初戦闘だ、慎重に行こう。


 こそこそと、音を立てないように近づいて、後ろを取る。

 近くで見ると結構でかいなこいつ、不意打ちなら大丈夫、大丈夫。

 ゆっくり慎重にと近づいていたら、魔獣は何かに気付いたように顔を上げた。

(気付かれたかな?)

 いやこっちを警戒している様子じゃない、じゃあ何を?

 と思ったら、大型の獣が目にもとまらぬ速さでで飛び込んできて小さい魔獣を人のみにしてしまった。


 え、ちょっと待った、こんなのいる森なのか?

 ハンターギルドの受付の人の言った「自己責任ですので」の言葉が今になって重みを持って襲ってきた。

 あ、また死ぬんだ。

 そう思ったその時、閃光が走って大きな魔獣は消滅した。

「お、すまんな獲物奪っちまって。それとも襲われてたか?」

 それはパワードスーツのようなもので武装して、手には少し前に見たスタックガン。

 どうやら助かったようだが、こんな世界でファンタジーはごめんだ。

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