第755話:ボウラグ・シンズ~感情フィクション~

 ああ、腹立たしい。

 本当に腹立たしい、あいつは結局自分がそうしたかったからそうしたくせに、なんで俺に責任を押し付けてくるんだ。

 本当に腹立たしい、となら思うんだろうな。

 そう、あいつならそう思う。


 1つの思考を飛ばして平常、これでいつも通りだ。


 他人の感情を想定して、これは他人の感情だと設定してしまう。

 そうすることで自分の感情とは関係ないということにしてしまう、そうすることで自分の平静を保つという精神安定法だ。

 しかも最近はも架空の存在になってしまった。

 感情を架空にしてしまえば嫌なことも嫌でなくなるし、無駄な怒りも消してしまえるんだ。

 だってそれは僕の感情じゃないんだから。

 気にすることはない。




 ああ、とても悲しいことがあった。

 失いたくないものを失ってしまった、欠けてはならないもの。

 とても悲しい、死んでしまいたくなるぐらい、となら感じるんだろうな。

 そう、ならそう感じる。


 1つの思考を飛ばして平常。これでいつも通りだ。




 そうして、感情を虚構に落として過ごしていたら、自分の感情がすべて虚構に落ちてしまったようで、自分という者が何もわからなくなってしまった。

 それはとても悲しいことだ、悲しいことだとは思うだろう。

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