第754話:アルテ・バーニ~首を挿げ替える~

「やほー」

「ん、おおサイロンか。また頭替えたんだな、一瞬誰かわからんかったぞ」

 よく頭を変えるやつだ。

「この頭がさ、なかなかいい顔してるだろ? その割に安くてさ」

「安いからって買ってると、またこないだみたく目とかに不具合が出るぞ」

「まぁそれはそれ、ダメだったらダメだったでまた新しい頭を買うよ」

「そんなもんか、お前しょっちゅう頭替えるから体の方でわかりやすくしてくれよ」

「うーん、まぁお前ぐらいしか同一性を維持したい相手もいないしなぁ」

「うれしいこと言ってくれるなぁ」

 いや、まったなんかおかしい気がした。

「頭を挿げ替えるってどういう感じなんだ? っていうか、意識は脳じゃないのか?」

「ん、あぁ。その辺は体のつくりが違うだけでな? まぁそもそも本来俺は首ないやつだから」

「は? マジか」初耳なんだが。

「ほれ」

 そう言って首を持ち上げる。

「いや、首が取れるって話は前から知ってるよ」

「あー、そうか。まぁいいや。つまりは元から首がない生物だからこうやって首を外しても問題ないわけ」

「じゃあなんで首つけてんだ?」

「前の世界ではなぁ首無し族は少数派でな、まぁこれが差別の対象になるわけだ、首無しは人間じゃないってよ」

「あー、そうかそういうもんだな」

「んで、こういう偽装首を作って、乗っけて、首ありの奴らに紛れて暮らしてたわけ」

「ほぉーそんな事情があるんだなぁ。あれ、でもこの世界じゃ別にそんな必要ないんじゃないのか? この世界じゃ首無し差別なんてないだろ」

「いやぁ、前の世界で慣れてるってのが一つと、顔替えりゃあ特に仲良くないやつとの縁が簡単に切れて便利なんだよ。わかるだろ?」

「なるほど、お前性格悪いもんな」

 むしろそっちの理由がメインじゃないのか?

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