第737話:バームⅦ~詭弁の価値~
「さて、弁明はあるか?」
「詐欺だって言うんだろ? それは見解の違いさ」
「ほぉ、どう違うのか聞かせてもらおうか」
昔に数度取引をした相手に捕まってしまった。
「取引っていうのはさ、お互いに提供物の価値を合わせてさ、それを交換することをいう訳じゃないか」
「そうだな」
「つまり、僕と君の間で共通の認識があった上での取引だったわけで」
「合意の上なんだから詐欺にはならないって?」
「いやそんなことはないさ、同意させる際に嘘をついていたら詐欺だよ、それなら僕だって怒るさ」
「お前がしたのはそうではないと?」
「ああ、僕がしたことはそういうことじゃないだろう? 君にとって価値があるものを、君が認めた価値で、君はそれで得をしただろう? 僕は何も騙してはいないし、君も何も騙されていない」
事実、僕が彼女に売りつけたのは異世界の品で、その世界では十分な価値がある、ちゃんと「僕以外では手に入らない品だ」と言った。
「あれを取引し続けるとあんなことになるんなんて知らなかったんだ!」
「それも僕の責任じゃない。僕はただ、君が欲しがる物を売っただけで、それをどうするかは君の裁量、君が欲を出したせいで君の世界は滅んだのさ」
「そもそも貴様が……」
「持ち込まなければ良かったって? いやぁ、確かに僕が持ち込んだアレが君の世界を滅ぼした原因になったことは認めるけどさぁ、アレはそういう性質のあるものじゃないだろ? 適切に運用していたらそんなことにはならなかっただろうに……」
僕は十分利益を上げさせてもらったし、感謝はしてるんだけど。
「僕を恨むのはお門違いってやつさ」
「言いたいことはわかった」
「わかってくれたか、じゃあ僕に復讐なんてことは忘れて、楽しく生きなよ」
「言いたいことはわかったが、それとは別に個人的な恨みとして、合理非合理関係なく、私は貴様を許すことはできない!」
そうかいそうかい、知ってた知ってた、今までこれで説得できたことないからな。
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