第707話:コビノス・ウニシカ~巨人の城~

「でけぇ……」

 目の前にあるのは身長の何倍もあろ巨大な扉。

 ここは巨人の住む城、標準的な背丈の俺には少しどころか、利用不可能なぐらいにでかい。

 城門かと思うぐらいにでかい扉が付いているこの城に住んでいるのはたった一人の巨人だ。

 今日はその友人である巨人の家に遊びに来たという訳なのだが「少し出かけてるから、先に入っていてくれ」ということだったのだが、俺一人ではこの巨大な門をどうすることもできない。

「帰ってくるまでひと眠りするか」




「もし、生きておられます?」

「ん……、なんだい?」

 帰ってくるまで寝るかと思っていたら誰かに起こされた、ほほを叩く手からそれは友人でないと気付く。

「門の前で倒れておられたので、もしかしたら死んでいるのではないかと声を掛けさせていただきました、日陰とはいえ気温も高いですし」

 改めてよく見るとどこぞの世界の給仕服を着た女性だ、巨人ではない。

「ああ、俺はここで友人を待ってるんだ。気にすることは無いぜ」

「友人……、もしかしてコビニス氏であられますか?」

「ああ、俺はコビニスだが」

「主より、案内するように仰せつかっております。どうぞ中へ」

「主……って、あいつの従者なの?」

「はい、私はクロスノシナ様の従者をしております」

 クロスノシナとは友人の名だ。

 あいつ、こんな小さい従者を雇っているとは……、小さいと言ってもあいつにとってはだが……、そんな趣味があったのか?


「あの、ちょっと聞いてもいいかい?」

 でかい扉の脇に小さく設置されていた、先ほどは存在に気づけなかった通用門を潜り城の中へと入った。

「何でしょう、私で答えられることなら」

「なんでここで働いてんの?」

「単純な話ですよ、主が募集をかけていた、私はそれに目を付けた、それだけのことです。条件もよかったですしね」

「巨人だけど?」

「巨人だからこそですかね。私もこの募集を見て知ったんですけど、彼ら、細かいところの掃除とか自分じゃできないのでこうやって人を雇うんですよ。チェックも甘いから楽で意外と人気の仕事らしいですよこれ」

「あー、なんとなくわかるな。あいつも結構雑なところあるし」

「いえ、それは巨人の特性ではなく主個人の性格の問題ですね」

「そうなの?」

「そうなんですよ」

 と、友人ことクロスノシナが返ってくるまで彼女が俺の相手をしてくれていた。

 屋外だって言われても不思議じゃないぐらい広い部屋の片隅、体感的には結構高所で友人の背的には顔の高さ辺りに、スケール的にはジオラマサイズなんだろうなと思える小部屋があって、そこで時間をつぶしていた。

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