第708話:スカルペ・スィフワ~夏の海~

「海だー!」

「はしゃぐと転ぶぞ、体が子供だからって中身まで子供になったか」

 海をめがけて一直線に突っ込んでいくオフラスの後を荷物を持ってついて行く。

「ウワー!? 脚が届かねぇ!? こんなに浅いのに! なんでだー!?」

「だから、体小さくなってんだろうが! 迷惑かけさせんじゃねぇ!」

 荷物を放り出して速攻で溺れにかかったオフラスを助けるために走りこんだ。


「はぁ、はぁ、死ぬかと思った」

「てめ、俺まで、引きずり込もうとしやがって、体小さくなってたこと忘れてたぞ」

 暴れるオフラスを何とか自分も引きずり込まれそうになりながらも引き上げて、浜辺で息を整える。

「ていうか、なんで海なんだよ……、またお前と海に来ることになるなんて思ってもみなかったんだが」

「やっぱり夏は海だろ、泳ぎてーじゃんか」

「プールでもなんでもあるだろう」

「プールなんていつの季節でも行けるだろうが、やっぱり夏に行くなら海じゃねーとな」

「そうだな、海は夏がいいよな」


 半年前もこうしてオフラスと海に来た、あの時は俺もオフラスも手ぶらで、冬の海だったこともあってはしゃいではいなかった。

「あの時さ、」

 隣のオフラスが、あの時のような声で話しかけてくる。

「あの時はほんとうにごめんな、私につき合わせちゃってさ」

「気にするな、止められんかった俺も悪い」

「いつかさ、謝ろうと思ってたんだけど、やっぱり海かなって思ってさ」

「その考えはわからん」

「冬の海はもうこりごりだったから、やっぱり夏かなって」

「ああ、やっぱり海は夏だな」

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