第684話:〇・63~生き残り~
「〇・63、実験成功です」
無機質な部屋の中、聞こえる声があった。
「よく生き残ってくれたね、うれしいよ」
×××××博士だ、あれ? 名前は何だっけ…… 顔も、ノイズがひどくて顔もよく見えない。
「いやぁ、20人いた被検体のうち残ったのは君だけだ、喜ばしい」
私だけが残った? じゃあ、他にいたっていう19人は?
「会ったことも、顔も知らない、今まで存在も知らない、もう二度と会うことすらない、彼らのことが気になるのかい?」
気になる、私と同じだったはずの彼らはどこへ行ってしまったのか。
「それさ、」
はっきり見える指は私の背後を指していて、視線はそれに釣られて白と赤の山を見た。
白は、私の服と同じ色で、赤は私の中身とも同じ色だろう。
「彼らはねぇ、弱かったんだよ」
だめだ、
「君は彼らとは違ったんだよ」
違う、
「君と関係ない、死んだ者のことなんて気にすることはないさ、君は×××××」
博士は、最後に何と言っただろうか。
私はそこで意識を失った。
目を覚ました。
まだ私が向こうにいたころの記憶、最後の、あの時の記憶。
私は他のみんなと同じだった、被検体〇・63で、他の19人と同じただの被検体。
一人生き残ったのは運が良かっただけで、他の誰とも違うことなんてなかったと思う。
ただ、偶然唯一生き残ったために、私が特別だと言われるのは違ったんだと思う。
「ま、もう関係ない話か」
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