第683話:ロードリッシ・ドリアーズ~異世界剣豪~

 まさか剣に死んで、生まれ変わってまでも剣を握り、更には試合うことになるとは思わなかった。

 しかも、まさかまさか他の世界の人間とだ。

「妙な構えだな」

「そちらこそ」

 ああ、世界が違うとはこういうこだ、生前もよく「世界が違う」などと表現したことはあったが、実力に差がありすぎるという意味で使っていた。

 しかし、本当にこれは文字通り「世界が違う」

 実力の差すら測れない、培われた技術の土壌が違う、想定する相手の技が違う、しかし一対一で剣を用いて戦うという点、それだけは共通している。

 それさえ共通であれば何も言うことは無い、ただ斬り合うだけだ。


 互いに、相手は別の意図があるのかもわからないが、相手の出方がわからない為こちらからは動けない。

 そもそも、四本腕一刀流なんていう流派がわからん、腕が四本あるなら4本剣を持てばええだろ、せめて2本とか……

 昔書物で読んだ空想上の4本腕の鬼は4本剣やら金棒やらを持っとるもんだったが……、いやあれは鬼だからか……?

 いかんいかん、目の前の相手に集中だ。

 息を整えているな、四本腕でも人は人、呼吸が合わねば最良の動きにはならんだろう、スゥースゥーと、浅い息が聞こえる。

 視覚は必要としないのか、目は閉じている。

 第六感のようなものでこちらの動きを視るとしたら厄介だな、動きをごまかす技術が通用しない可能性もある。

 いや、もしかしてあれは寝ているのか……?

 目を閉じて、浅い息を漏らす、確かに寝ているような気もするが異世界の人だ、もしかしたらそういう戦い方なのかもしれない。

 油断してはいけない、相手は未知の技術を使う剣士だ。

 油断してはいけない……




 後から聞いた話、寝ていても反応できる自信があったらしく、あまりにも動かないから本当に寝ていたらしい。

 異世界の剣士、度し難いな……

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