第607話:コアル=ララ~ミラーハウス~
隣を見る。
こちちらを見る自分がいる。
反対側を見る。
同じようにこちらを見る自分がいる。
正面を見る。
こちらを見る自分がいる。
ここはすべての壁が鏡になっている建物。
娯楽施設だけど、一度体験したら二度とはいいかな、とそう感じるようなものだ。
何かが変な気がするけど、鏡だらけのこの建物がそもそも変で何が変なのかいまいちわかりづらい。
とにかく、私はここに間違えて入ってきただけなんだから何とかして脱出したい。
「あいたたた」
頭をぶつけた。
ここはほとんど鏡だから正面からくる自分に気を付ければ壁にぶつかったりはしないはずなんだけど、たまにただ透明な壁が紛れ込んでいるからこうやってぶつかる。
設計した人はよっぽど性格が悪いらしい。
鏡で方向感覚が狂っているところにこういう透明な壁を置いてぶつかるように仕向ける。
よぉし、こうなったら何が何でも脱出してやることにする。
こういう迷路ではマッピングが重要だ。
壁が鏡なこと以外は普通の迷路(たぶん)、地道に地図を書いて行けば絶対に脱出できるはずだ。
あとは目印を置いて、間違えないようにするぐらいか。
一応鏡と透明な壁を区別できるようにだけして、持ってたおはじきを適当な間隔で置く。
視界の端におはじきが映る。
「?」
振り向くと鏡、後ろにはおはじきが一つ転がっている。
いや、一つじゃない。
いくつものおはじきが鏡には映っている。
やっと違和感の正体に気付く。
この鏡には鏡が映ってないんだ。
この鏡に映った鏡は透けて向こう側が見えている。
これに気付けば脱出も容易に……!
ならない、かな?
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